第25話 姉として
ムソウの技を受けて倒れ伏すムクロ
「く・・・そ・・・!」
血を吐くような声で悪態をつく
刃は胸を切り裂いた。
しかし、まだ、息がある
左の義手が砕けているのを見ると、瞬間的にあの義手でマゴルダグニアの一撃を受け止めたことにより、致命傷を避けたというところか
「ムソウ殿!まだ、ムクロは息があります!早くとどめを!」
「うむ」
ラザロの声に従いムソウは上段にマゴルダグニアの剣を振り上げる
「お待ちください、父上」
フェイはエクセリオンを構えてムソウの前に立ちはだかる
「フェイ」
「ムクロを、私の弟をこれ以上、傷つけることは私が許しませぬ」
残された右の瞳は確かな意思の光が放たれている
左の瞳が潰されてもフェイの戦意はまだ、死んでいない
「ほう」
ーー今日から、この赤子はお前の弟である。フェイよ、お前に世話を願いたい、この子の母親代わりになってもらえぬか?
「ムクロの母は難産の末にムクロを産んだ後に、すぐに死んだ。私はお前にその母親の代わりを任せたのだが、今でもその情は変わらぬようだな」
自分はムクロに対して母の情を抱いていたのか?
フェイは父に言われてハッと気づいた
今、ムソウにとどめを刺されそうなムクロを救いたいという、この想いもそのためなのか
自分は剣一筋に生きてきた女だ
女としての、母の情など理解できない、そう思って生きてきたのに
だが、父からそう言われて悪い気はしなかったし、これでパズルのピースが組み合わさったように、理解することができたのだ
今、自分がやるべきことはムソウから我が弟、いや、我が子のムクロを守ることであるのだと
「勝負です。父上」
「その残された右目で、私の剣を見切れるかね?」
フェイとムソウの剣がぶつかりあう
お互い振るうは『星空一文字流』
お互いの先の先を読み、撃ち込まれてゆく剣と剣
ズシャっつ!!
ムソウの鎧の胸部が切断されて落ちる
エクセリオンの能力は原子をすり抜けて物体を切断する能力
その能力を振るうフェイの腕はすでにムソウの読みの範疇を超えている
「さすがだ、さすが我が娘。お前ならば私を超えるかもしれぬな」
「ムソウ殿!」
ムソウを助けるためにラザロが髑髏型の死霊を飛ばす
死霊がフェイに直撃し、爆発する
フェイは咄嗟に体をエクセリオンで透化させて爆発の衝撃をすり抜ける
「『斬り捨てる』」
ムソウは事象を斬り捨ててフェイの透化を無効化する
「くっ」
「御免」
フェイの実体化した頭に向かって、ムソウはマゴルダグニアを振り下ろす
「させるかよ!」
振るわれたムソウのマゴルダグニアをムクロがギルセリオンで受け止めた
血は胸からまだ、滲み出ている
立っているのもやっとのはずだ
それでも姉のために、ムクロの体は動いていた
「ぐぐっ」
ムソウの剣にムクロが押される
「ムクロ!」
さらにそこにフェイのエクセリオンが交わり、二人でムソウの剣を押し返す
その時、三つの魔剣が重なった状態になった
「ムクロ」
「フェイ。てめえだけで、いい格好させるかよ」
「・・・これは一体」
重なったギルセリオンとエクセリオンが光を放っている
ギチギチギチ
剣と剣の交わった部分から融合を始めている
その光は重なりあい、虹色の光を放っていた
ムソウは目を見開いた
「まさか、二つの剣が一つに戻ろうとしているのか?」
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