第5話

「ふう……」

「大丈夫ですか〜?」

「ちょっと色々ありすぎて……」

「わかります〜なんでもないみたいに言えることじゃないのに〜」

 蒼井さんと別れた後、私と桐生さんはその足で私たちがこれから通うことになる1年C組に向かった。そうしてクラスに着いて自分の席に座ると、一息ついた。

「なんか不思議でしたよね〜」

「なんでしょう、ちょっと浮世離れしているみたいな感じでしょうか」

 その疲れの原因は言わずもがな、さっきまで一緒にいた蒼井悠に関してだ。学年2位の成績をなんてことないと言い切ったり、この学校のエリートクラス、S組に行ったというのにあまり興味がなさそうな態度を貫いている。それが悪いというわけではないが、どこか普通の少年なのかというチグハグ感が滲み出ているのだ。

「S組の人はみんな蒼井さんみたいなんでしょうか〜」

「それは流石にわかりません……でも、多分私たちとはすこし違うのかもしれませんね」

 それが才能か、覚悟か、心か。なんなのかは私には知りようがない。でも、少しでもそこに辿り着きたいと願うなら、私も彼らを見習わないといけない日が必ず来るだろう。

「みんな、おはよう!」

 桐生さんとぼちぼち話していると勢いよく教室のドアが開けられ、そこからハリのある大きな声をあげながら筋骨隆々な男性が教室に入ってきた。

「俺が、この1ーCの担任、近藤新志(こんどう あらし)だ! みんな、よろしく!」

 そうして自己紹介をした近藤先生は着ていたTシャツがパンパンになるくらいに胸を張っていた。クラスの大体はそのインパクト抜群の先生にどう対処すればいいのかがわかっいなかったため、さっきまでの先生の声と合わせて、クラスが静まり返っていた。

「はい、拍手、拍手!」

 先生からの催促もあって、一人、一人ポツポツと拍手が響いていた。

「まあ、まだ慣れないかもしれないが、これから一年間よろしくな!」

 見た目にそぐわない明瞭な声で挨拶をしてきていたが、それに対しても私たちはどのように接すればいいのかが分からずに、拍手だけが延々と響いていた。

「まあ、今日は顔合わせがメインだからな、みんなの自己紹介は明日からにとっておこう」

 先生の自己紹介の後はこの学校についての軽い説明と教科書とかの必要なものの購入で時間が終わった。

「じゃあ、みんな。学校生活、頑張っていこう!」

 そんな一人だけ熱量が違う先生の言葉を聞いて、入学式直後のHRが終了した。そして、教室から先生の声が消えて、徐々にザワザワした声と一緒に周りにいたクラスメート数人が教室から出ていくのが見えた。そんな時、私の肩が誰かに叩かれた。後ろを向いてみると桐生さんが私の真後ろで笑顔を浮かべながら立っていた。

「一緒に帰りませんか〜」

「……大丈夫ですよ。是非、ご一緒させてください」

 そう言いながら、私はカバンから取り出したスマホでマイに迎えが入らないという旨の連絡を送った。私と桐生さんは軽く雑談をしながら、それぞれ帰宅の準備をして教室を出ていった。

 教室を出ながらも雑談の続きをして、のんびりと昇降口に向かっていった。その途中で私たちは顔見知りと出会った。 

「桐生に東雲か」

「あ〜蒼井さん〜」

 蒼井さんが淡々と話しながら、私たちに近づいてきた。それに対して、桐生さんは挨拶を私はお辞儀だけした。

「お前らも帰りか」

「はい、桐生さんに誘われまして」

「運よく仲良く慣れたので〜誘っちゃいました〜」

「そうか、良かったな」

 同学年なのに一歩引いた場所で物事を見ている。それが今の蒼井さんに感じた違和感だ。冷静で大人ぽい人がいるのはわかるが、私たちを見る目がどこか一歩引いている。 

「蒼井さんも一緒にどうですか〜?」

「……いいのか?」

「私は大丈夫です〜東雲さんは〜?」

「私も大丈夫ですよ」

 そうこう考えていると、桐生さんが蒼井さんのことを誘っていた。私にとっても少し不思議なだけで嫌いってわけでもないから良かったけど、事前確認が欲しかったな。

「それじゃあ、ご一緒させてもらうか」

 そうして、入学式の時の三人で下校することが決まったのだ。

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