9 休日
今日は休日。そして僕の好きな小説家
僕はこの日をかなり期待していた。
なぜなら、安藤先生の小説は3年ぶりの新刊だからである。
どれだけこの日を待ったことか。
10時に間に合うように書店へ行こう。
準備しなきゃ。
近くにも書店があるが、今日は少し遠い書店に買いに行く。
そこにはサイン色紙が飾ってあるらしい。
こんなの見たいに決まっているじゃないか!!
自転車で1時間ほどかけて書店へ向かった。
10時前には着いた。少し張り切りすぎたか。
10時まであともう少し。
この待ち時間がとても長く感じる。
数分後。
「開店でーす。」
オープンした!よし、どこだろう、探そう。
新刊コーナーのところにあるはず!!
いつも以上に目を開いて探した。
あー!!あった!あったぞ!
念願の安藤先生の新刊『サラサーテの夜更かし』
あ!サイン色紙もある!
安藤先生のサイン、初めて見た!
うわぁ!感激だ!
こんなにテンション上がったの初めてかも。
よし!買おう!
僕はレジに向かった!
「お、お願いします。」
「あれ?平岡っちじゃん!」
ん?聞いたことのある声だ。これは、まさか!?
僕は顔をあげた。
「入野さん!?」
「どうしてここに??」
「いや、ここ、あたしのバイト先だから。」
「あぁ、なっ、なるほど!びっくりしたぁ!」
「びっくりしたのはあたしもだよー!」
「本、カバー付ける?」
「あ、いや、大丈夫だよ、そのままで。」
休日に。まさか、入野さんに会うなんて。
やばい、いつもと雰囲気が違う。心臓が、鼓動が激しくなる。
「こんな朝早くから来たってことは、この本目当て?」
「まぁ、そんなとこ。」
「そーなんだ!あっこの本の新刊コーナー、あたしがいい感じに置いたんだよねー!」
「安藤 正司、『サラサーテの夜更かし』か。」
「この安藤さんって作家、好きなのー?」
「うん!めちゃくちゃ好き!僕、この安藤先生の大ファンで!」
「サイン色紙、ここにあるって知って!!」
やばい、早口になってしまった。キモすぎる自分。
「ほほぅ、にひひひ。」
「サラサーテってあれでしょ?『ツィゴイネルワイゼン』とかの。」
「え、知ってるの?」
「まぁそれなりに、かな。」
「ねぇ、読んだら感想聞かせてよ。」
「うん、それくらいなら!」
「ごめん、テンション上がっちゃって。」
「いや〜。休日に私服の、それもテンションアゲ〜のレアな平岡っち見れて嬉しいよん!今日はツイてる~!!」
「う、うん!それじゃ、ありがと。」
「また学校でね~!!」
まっ、また恥ずかしいところを見られてしまった!?
まぁでも、この本も買えたし、サインも見れたし、それに・・・。
休日の入野さんにも会えた。
嬉しい。とても、嬉しい。
今日は最高にいい日だ。
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