第4話 ウマカツと、語られざる勇者たち
意外にも、謎の和武士――イサハヤは面倒見が良かった。
さすらいの風来坊という言葉が似合う、和武士の男。
年は四十代過ぎ……いいや三十代だろうか。全身に纏う深い暗緑色の着物に、それに合わせた黒の袴。腰に帯びた大太刀を納めた鞘は黒の漆塗りで、その表面には細かな刀傷が刻まれ、長年の戦いを経てきたことが一目で分かる。
加えて、深く編笠を被った顔は不自然に落ちる影で表情が見えず、何を考えているかも分からない。
多分、メカクレってやつだ。時折わずかに覗く口元の動きや、落ち着いた声音からは、経験に裏打ちされた冷静さが滲んでいた。
そんな彼が、朝陽の隣に座り、解体の手元を見ながら低く言う。
「その部分は硬すぎる、食うには向かん。内側の部位を取れ」
「そこは脂が乗っている、焼けば旨いだろう」
最上位ユニコーン・ユニハルコンの解体を進める朝陽に対し、イサハヤは的確に可食部分と不可食部分を指示する。その迷いのない口調に、朝陽は次第に疑問を覚えた。
……この男、教え慣れている。
鋼鉄の装甲は死後も継続するもので、解体にはそれ相応のナイフなどが必要であること。
装甲が厚い分、普通の馬と比べると可食部分が減ってしまうこと。
その代わりに味は絶品で、特に心臓と角が高く売れる事。
ユニハルコンの蹄は研石に代用できる事。
イサハヤは、ユニハルコンの特性や解体のコツをここまで熟知している──きっと、何度も相手にしてきたのだ。にもかかわらず、彼はパーティを組まずに、いまもソロで戦っている。
それが不思議に思えてならない。
「それだけの実力があって、どうしてソロなんだ?」
その疑問を口にすると、イサハヤは一瞬だけ動きを止めた。
朝陽は、その小さな間に何かを感じ取る。
沈黙の末に、低く、短い返答が返ってきた。
「……ソロであることが問題なのか」
棘を含んだその言葉。朝陽は、思わず肩をすくめた。
「いや、そういうわけじゃないけどよ。ただ……単純にパーティの方が効率いいだろ? Aランク以上の依頼なんて、普通はパーティ組んでやるもんだし……」
勿論ソロで戦う冒険者もいる。しかし、先のとおり一人で戦うよりも数人で戦った方がよっぽど効率が良い。……何かを制限して戦ういわゆる縛りプレイが趣味なのかは分からないが、彼の面倒見の良さを見ていると人嫌いには見えない。
しかし、イサハヤは黙ったまま、切り分けた肉を保存用の葉に包んで、麻紐で縛る。
沈黙が落ちる。……あまり話したくない事なのだろうか。棘のある言葉を思い返しては一瞬迷ったが、もう一度訊ねた。
「……イサハヤ。別にアンタを解き明かしたいってわけじゃないんだ。ただ、これだけモンスターに詳しいのに、ソロってのは珍しいと思って。俺がアンタの立場だったら絶対に効率重視でパーティを組んで、経験値とか素材とか、分担しただろうからさ」
何もソロプレイであることを責めたいわけじゃない。
ましてや、彼の裏事情を深く聞きたいというわけでもない。ただ、なんとなく利口な彼がわざわざ不利な状況を選ぶ理由が気になっただけ。それを伝えると、イサハヤは、低く息を吐いた。
「……昔は、一人ではなかった」
それだけ言って、イサハヤは笠の奥に視線を落とす。
ほんの僅かだけ、声の調子が揺れた気がしたが、何を意味するのかは分からない。だが、何か訳アリである事だけは分かる。
焚き火の炎がゆらりと揺れ、彼の影を長く伸ばす。
過去に何があったのだろう。しかし、これ以上踏み込むことはできなかった。
朝陽はそのまま身を引くと、突然後ろからスコンと何か軽い感触が頭を叩いて、振り返ることになった。
「朝陽、話はいいからお肉!」
そこには、魔力切れでグッタリとしていたはずの芽衣が立っていた。
魔力が完全に回復するまでは休むよう千早に預けていたが、芽衣の背後で千早が両手を合わせて謝るポーズを見せている。……多分、芽衣が大丈夫だとか何とか言って嫌がったのだろう。まったく、忙しない奴だ。
その一方で、解体作業を手伝っていた燈夜も疲れが上回ってしまったようで、完全に集中力が切れた様子で手を止めていた。
唯一気絶していたミズキもいまだ木陰で体を倒している……彼らのことを考えれば、確かにいまイサハヤを探るよりも食事が優先か。
朝陽は「殴るなよ」とクレームだけ入れると、イサハヤに向けて質問を向けた。
「なぁ、一番美味い部位ってどこなんだ?」
「……何を作るかにもよると思うが、好まれるのはヒレだろうな」
張り詰めた空気が和らいで、イサハヤが解体して部位ごとに取り分けた肉の一つを指す。
それを聞いた芽衣は「ヒレがあるならサーロインがあるのでは?!」と前のめりになって尋ねていたが、そりゃあ部位の名前だからヒレがあるのだからサーロインだってあるだろうに。
……そういえば、このあたりの部位名は元の世界と変わらないんだな。
そんなことを思いながらヒレとサーロインを抱えて満足そうにしている芽衣を見ながらマジックキッチンを出すと、突然現れた現代風キッチンにイサハヤが少し……いや、かなり怪訝な様子を見せた。
「……見たことのないスキルだな」
その声色は、渋い。
「戦闘では役に立たないけどな」
「……では、何故あの娘が使うんだ。お前が使うものではないのか」
「あー……それが、このスキル自体はもともと芽衣が希望していたものなんだが、間違って俺に振られてな」
それに続けて、横から燈夜が口を挟む。
「スキルの振り間違いは朝陽だけじゃないぜ、全員だ」
「全員?」
「ああ。……それぞれ希望したものが、ものの見事に違う奴に振り分けられちまった」
あの王様、本当に適当だよな。呆れ混じりに話す彼は「これだって元々は千早が要望していたスキルだ」と言いながらマジックバックを取り出して、そこへ余りの肉や戦利品たちをしまう。その声色はどこまでも呆れ混じりだ。
それを聞いたイサハヤは笠から垂らす藤のような薄紫の石飾りを揺らして静かに言葉を紡いだ。
「……お前たちは、転移者なのか」
低く、静かな問いかけ。その声には、なにか確信があるようで、それでいて探るような響きがある。
朝陽は一瞬、戸惑いながらも頷いた。
「……っもしかして、アンタもそうなのか?」
しかし、イサハヤはゆっくりと首を横に振る。
「いいや、俺は生まれも育ちも、この国だ」
それから、僅かに間を置いて続けた。
「ただ……昔、一緒に戦った奴の中に、お前たちと似た者がいた」
「それって……」
「……どうだろうな」
それ以上の言葉はなかった。笠の下の影に隠れた口元が、微かに動く。しかし、それが笑みなのか、ただの口の動きなのかは分からない。
朝陽が更に踏み込もうとした瞬間、それを制すようにイサハヤは低く呟いた。
「遠い記憶だ」
「……だが、お前たちを見ていると思い出す」
焚き火の炎が揺らぎ、赤々と照らす。
朝陽は息を呑んだ。
「思い出すって……その仲間は、今どこに?」
「……さあな」
またしても、核心には触れない。
しかし、その一言には妙な 重みがあった。
イサハヤはふと視線を千早へと向ける。何を見ているのか、何を確かめているのか——それは、誰にも分からない。事実、千早もその視線に気づいたようにイサハヤを見ていた。
しかし彼女はなにも分かっていないようで不思議そうな顔を向けており、もう一度話を戻すために「なぁ、イサハヤお前は千早のことを何か知って――」と口を開いたところで、ジュワァッと隣から油の弾ける音と、なんとも食をそそる香ばしい匂いが漂ってきた。
沈黙。
「……芽衣、……お前……もう焼いてんのか……」
話を続けようにも、ジュウジュウジュワジュワと揚げる音も、香ばしい匂いが気になって集中力が続かない。
振り向くと、芽衣が鉄鍋の前で自信満々に頷いていた。油の中で黄金色に色づいた衣がゆらゆらと揺れ、ジュワッと小気味よい音を立てている。
「揚げてる!」
「いや、そういうことじゃなくてだな」
「もお!話は後! これからはご飯の時間なの!」
話の腰を折られた手前、抗う理由はない。
朝陽はため息をつきながらも、イサハヤに断りを入れて話を中断すると、芽衣の横に立った。
「朝陽は、残ってるお肉を全部小麦粉、卵、パン粉の順番で衣をつけていって」
油の跳ねる音とともに、彼女の手が忙しなく動く。肉を揚げる料理と言えばトンカツだが、今使っている肉はユニハルコン。つまり、馬の肉だ。……ということは、トンカツならぬウマカツという事だろうか。
肉を小麦粉につけ、卵に浸し、次はパン粉の順番でつけていく。
そのとき隣で揚げている芽衣の口元が少し膨らんでモゴモゴと動いていることに気付いた。気になって、小麦粉のついた手で頬を突くと芽衣は鬱陶しそうに唸った。
「もお!料理中でしょ!」
「いや、なんかモゴモゴしてるから」
「これはパン粉のあまりですう」
そういえば、ユニハルコンの装甲をフライパン替わりにして残りのパンを焼いていたっけ。このパン粉はあれを削ったものだったのか。どうりで荒くてカリカリだったわけだ。
パン粉をつけてカキフライだとか、クリームコロッケぐらいのサイズになったものを隣の皿に詰んでいく。芽衣はそれを手際よく上げていき、ジュウジュウと揚げるうちに木陰で休んでいたミズキが起き上がってきた。
「うう……いい匂いする……」
両手を前に突き出してよたよたと歩く姿は、なんとなくゾンビっぽい。
燈夜はそれを呆れたように見ながら息を吐いた。
「食い意地で起きてくるな、体は大丈夫なのか」
「ううん……首が寝違えた感じ……」
「関係なさすぎるだろ……」
「もうミズキちゃん!ちゃんと寝てないと駄目ですよ!」
……まぁ、あの様子ならばひとまず大丈夫そうか。
「ヒレは火が通りやすいから、揚げすぎないのがポイントだよ!」
「朝陽よく見て、この揚げ色がベスト!」
芽衣は、得意げに菜箸でヒレを持ち上げる。カツの衣がサクサクと音を立てるたびに目を輝かせ、鼻をひくつかせては「最高…!」と声が裏返っている。
「サーロインはちょっと厚めだから、じっくり火を入れるよ!って……朝陽、ちゃんと見てる?!」
「はいはい見てるよ、料理長」
あまりのテンションに、朝陽は思わず笑う。
誰よりも楽しそうに、誰よりも真剣に。
芽衣の表情は、料理を前にした時だけ特別な輝きを放っている気がする。
芽衣が菜箸でつまんだヒレ肉を持ち上げると、表面の衣がサクサクとした音を立てる。衣が分厚くなった分ボリューミーなサイズだが、いまこの場にいるのは食べ盛りばかり。衣が分厚いぐらいがちょうどよいかもしれない。
「最後にレバーはじっくり火を入れます!」
「へぇ、そりゃまたどうして?」
「生は食中毒を起こしちゃうんだよ、生のレバ刺しとかもよく美味しいって言われるけど駄目なことなんだって……いや、でもユニハルコンのだったらイケたりする……?」
「やめとけやめとけ」
じっくりと揚げたレバーは、どうやら魔力暴走により鼻血を出したミズキ専用メニューらしい。それら揚げたてを皿に盛って燈夜が運ぶと、パーティいち食いしん坊のミズキがひとり茫然としていた。
「え……?みんなはフィレとか、サーロインなのに……私だけレバー……?」
その絶望感といったら!
「………仕方が無いだろ、今は鉄分補給が大事だ」
「そうですよ、ミズキちゃん」
「……ユニハルコンのレバーは魔力の補給にもいい。お前たちも食べなさい」
「へえ、そうなんですね……ですって、ミズキちゃん!」
「やだーーー!!」
「はいはい元気だなぁミズキは」
「あはは声でか」
「ほら!こんなに声でるもん!!元気だもん!!!!」
「いやいや、また鼻血出てるぞ」
「うがああ!!」
諦めてレバーを食えと呆れ混じりに口に向けられたレバーカツを食べるミズキは、みんなを恨み混じりに見ていた。
あまりの恨みっぷりに適当に声を掛けても「ヒレ」とか「サーロイン」とか「ランプ」とか部位で返事をする徹底っぷり。食べ物の恨みは怖いって本当なんだな……朝陽はしみじみと思った。
全員が揃って食事を初めて暫く。
千早が手を止めたままのイサハヤを見て尋ねた。
「イサハヤさん、お腹すかれてないんですか?」
この世界で魔物食は当たり前の事だが、ウマカツはまだこの世界にはない料理なのだろうか。それとも単純に食が細いのか。着物の袖から伸びる彼の手は少し筋張って痩せているように見える。
イサハヤはその視線に気づくや否や、箸を器用に使いウマカツを摘まむと、小さく言った。
「………いただこう」
言いながら、イサハヤが口へと運んでサクッと衣を割った瞬間、熱と一緒に肉汁がじわりと滲み出た。香ばしい衣と、しっとりした肉のコントラストが、口の中にじんわりと広がる。
「……」
イサハヤは無言で噛みしめ、じっくりと味わうように咀嚼を続けた。
ざくりと崩れる衣に口の中で溢れる馬の旨味と脂。ユニハルコン自体は初めて食べたわけではないが、イサハヤが口にした料理は初めての調理方法だ。……肉なんて焼くか煮るかだったのに、少しの手間を加えるだけでこうも印象も味も変わるのか。
咀嚼を繰り返すと、千早は安心したように笑む。それから少し離れたところで別部位が食べたいとごねるミズキと仲間たちのやりとりにクスクスと笑った。
「……お前たちは、いつもああなのか」
「……ええ、そうですね。私たちは同じ学校、……同じ故郷の出なんです。だからこういった雰囲気の方が多いかもしれません」
千早はそう答えたあと、少しだけ視線を落とした。
……この人は、輪に入ってこない。
食事の場にいても、話しかけられても、どこか一線を引いているような雰囲気がある。それが単に不器用なだけなのか、それとも――。
彼の目に私たちは、どう映っているのだろう。
一緒にいるから見えるものもある。
だけど、離れて見ているからこそ、気づけることもある。
「……イサハヤさんは、仲間と食事をしたことって、ありますか?」
ふと口に出たその言葉に、イサハヤの箸が、ぴたりと止まった。
「……、……」
石飾りが揺れ、イサハヤは仲睦まじく食を進める彼らをもう一度見た。
その視線には何の感情も浮かんでいない……ように見えたが、ほんの一瞬、笠の奥の口元が微かに歪んだ気がする。
「この先、お前たちはどうするんだ」
問いにも答えず、ぽつりと落とした言葉に千早が一瞬きょとんとする。
「ええと、ひとまず依頼を終えることが出来たのでギルドカードを更新に行こうかと」
「違う、その先だ。……お前たちの最終的なゴールはどこにある」
「ゴール、ですか」
「何も、ただ戦うために動いているわけじゃないだろう」
イサハヤの低い声が、焚き火の音に溶ける。
千早は朝陽たちをちらりと見た。彼らも無言で頷く。
「私たちのゴールは元の世界へ戻ることです。……そのためには、王様が言っていた魔王を倒します」
それは、決意に近い言葉だったように思う。
しかし、イサハヤは僅かに笑いを滲ませた。
「……ふ、その割にあれなのか?」
「え?」
イサハヤの目が僅かに細まる。
「本来補佐の役割を持つクラフターが気絶して、タンカーであるそこの女も動けない。ヒーラーのお前もその二人にかかりっきりになって、残った二人は歯が立たず………あのユニコーンは確かにS級モンスターだが、お前たちが倒したい魔王のしもべモンスターだ。そんなモンスターでやられているようじゃ、到底敵わないだろうな」
「……それ、は」
「浮ついたままお遊びでやるつもりならやめたほうがいい。どこかでひっそりと野垂れ死ぬのが関の山だろう」
イサハヤの言葉は、厳しく、冷たいものであった。
「……っ」
言葉が詰まる。
いま言われた言葉に、言い返すだけの力がなかったからだ。
それを全員は理解している。けれどそれを受け止められるかは別の問題。ミズキや芽衣は自分が足を引っ張った事が原因であると思っているせいか下唇を噛む事しか出来ず、千早も何か出来たのではないかという反省を突かれて言葉を出せず。
燈夜はつい感情的に「………ッそんなのポッとでのお前が」と返したものの、それを制した朝陽の言葉はやけに冷静であった。
「そうだよ」
「ッ朝陽!お前、言われっぱなしで…!」
「……燈夜、おれたちは弱いんだよ。それは紛れもなくそうだし、浮ついた気持ちだったってのもそうだと思う。このままじゃ駄目だっていうのもそうだと思う。……全く耳が痛い正論だ。でもイサハヤ、アンタはどうなんだ」
「……なに?」
「アンタは生粋の世話焼きと見た。……わざわざこうして忠告したのも、危険行為を止めるためのものだろうよ。そんなアンタがおれたちを見捨てての垂れ時慣れたら後味が悪いんじゃないか?」
笑みに混ざる、僅かな交渉。
イサハヤはそれを黙ったまま視線を向ける。
「だから、おれたちの仲間になってほしい」
「は?」
それは、意外な言葉であった。
女たちのように口を噤むわけでも、燈夜のように怒るわけでもない交渉。
「アンタが何をゴールとしているのかは分からないが、いま仲間がいないのならおれたちがいる方がソロよりかはマシだろ?」
そう語る彼の交渉はどこか小生意気にも聞こえる。
「……随分と都合のいい話だな」
「それはそうだ。でも、おれたちは今のままじゃダメなんだよ」
朝陽は、焚き火の火が揺れるのを見つめながら言葉を続けた。
「……俺たちは死ぬわけにはいかない。元の世界に戻りたいんだ」
「…………」
本当は分かっていた。俺たちには、戦う力が足りないって。
経験も、知識も、鍛錬も、何もかもが足りていない。師匠もおらず、この世界が何たるかを教えてくれる人もおらず、王様に急かされるまま、のらりくらりと進んできた。手探りのまま、なんとかここまで生き延びた。
でも——もう、それじゃダメなんだ。
このままじゃ、きっと俺たちはどこかで野垂れ死ぬ。
戦いの中で、一人ずつ欠けていく。誰かが倒れ、そして気がついたら俺たち五人全員がいなくなる。……そんなのは、嫌だ。絶対に嫌だ。俺は戻りたいんだ。
そのためには、強くならなければいけない。
そして、そのために——この男の力が必要だ。
「だから、強くなりたい。そのために、アンタの力が必要だ」
そう言い切った時、焚き火がパチッと弾けた。
イサハヤは、それをじっと見つめたまま、静かに息を吐く。
「分かった。ただし——」
そこで言葉を切り、一瞬だけ空を見上げる。
「覚悟は出来ているんだろうな?私は赤子の重りをする気はない。私が言うお題にクリアできれば、その時は仲間になろう」
焚き火が、ゆっくりと燃え上がる。
彼の影が長く伸びる中、イサハヤはゆっくりと口を開いた。
「どれほどの覚悟があるか、見せてもらおう」
その言葉は、焚き火の煙とともに、静かに夜へと溶けていった。
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