占領

 フレンシアは叫んだ。

「てめえ、覚えてろ!」

 座標がズレたのだ。

 曳航ロープにぶら下がっていた。

「フレンシア、何してる」とヴィン。

「おまえんところの転移装置、まともな精度出ないのか。くそ。海の上だ」

 何とか船へよじ登った。

 甲板で連続した発砲音が聞こえた。

 船べりから銃を向けられたが、アマンダは身をかわしつつ甲板に乗り込んだ。

 剣を抜いて乗組員を斬り捨てた。

「コイツら海賊じゃねえか!」

 排莢したロペが装弾した。

 ヒラヒラと敵を撃ち、海へと蹴り込んだ。

 ツルマイは海賊と取引してるのか。

「ロペ、船長室だ」

「了解!」

 アマンダは集まる荒くれどもを刃風で海へと放り出すと、一気に制圧した。

「どうするの?船長!殺す?」

「証人だ。副船長は好きにしろ」

 

 ヴィンは網を伝い、甲板に加勢に上がったところ敵はほとんど倒れていた。

「アマンダ、どうして?」

「おまえを救いに来た。クロノスは奴隷商人なんて認めてない」

「我々はスタリングの船だ。おまえたちのしていることは戦争行為だぞ」

「知るか」

 奴隷を甲板に上げた。

 全員の手枷足枷を外して解放した。

 アマンダはひとまず船をツルマイに戻せと船長に命じると、船長はできないと答えた。

 ここはスタリングの海域だ。

「我々は海賊ではない。スタリングが認めた商船状を持っている。貴様らこそ海賊だ」

「ここにいる奴隷はどう説明する」

「私は知らん」

 アマンダは船長に命じて、ムランの港へ向かわせることにした。寄港地はツルマイに匹敵する港だが、ムランは商業港ではなく漁港だ。


 スタリング国の沿岸警備隊がいた。

 撃ってきた。

 警告だ。

「当ててはこない」

 アマンダは答えた。

 水柱が立つ。

「たぶん」

 船はムランの漁港沖で停泊した。

 警備隊がボートを寄せてきたが、ロペが撃とうとしたのでやめさせた。こういうところは自由人でもある。

「奴隷解放を約束しろ!」

 アマンダがボートに叫んだ。

 ムランの漁港に上陸できるように支度すると話したが、アマンダは覚悟を決めた。

「わたしはクロノスの議員だ」


 漁港に上陸した。

 スタリングから行政官が来た。

 青年だ。

「グルックです。アマンダ殿、傭兵隊長のお噂は聞いています。しかしこれはどうですか」

「奴隷解放のために来た。この計画に政府は関係ない。わたしの判断だ。スタリングは奴隷商人を認めていないと聞いているが」

「もちろんです」

 すでにグルックは奴隷を扱っていた商人を捕まえていた。よくできる青年らしく、船長からも話を聞いていた。

「ここだけの話、半ば海賊です。何とかここだけでケリをつけたいのですが。帰れるように手配します。議員でないことで」

「話がわかるな」

「こちらも戦争はしたくないんですよ」

 ひそひそ話した。

 アマンダたちは三日ほど待たされた。グロックという行政官は事故のために上陸を許可したが、国外退去にする旨を書類にしてきた。

 隣のミンド港へと移送された。

 奴隷も含めてだ。

「あなたがアマンダとうことも私は知らないことにしたい。船はあの定期船です」

「恩に着る」

「お互い様です。シュミットが出てくるかもしれないんですよね?止めてくださいよ」

 







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