本末転倒、召喚獣退治

 アマンダの領地に行くまでに、群れをなした召喚獣に出くわした。こちらは話も通じないし暴力的で村々を襲うという荒くれだ。

「師匠、どうするんですか」

 待て待て。

 懐から画面を出した。


『喚んではいけない召喚獣』

 番外編

 バイダ・召喚獣の中では知能は犬くらいに低く野良になると群れをなす。もしバイダを召喚するなら鎖も準備すること。戦場で放つと敵も味方もなく殺すから躾には注意してね。


『◯◯地域バイダ群・一頭につき懸賞金一シルベ。クロノス巡回裁判所判事エレア』

 ヴィンはグランに尋ねた。

「何頭いる?」

「十くらいですかね」

「やるか。要するにスレイを連れて行くために年間10ゴルベ稼げばいいということだ」

「どうして稼ぐんですか」

「賞金しかない」

「本末転倒じゃないですかね。召喚獣を守るために別の召喚獣を殺すんですか」

 召喚獣の区別するということだ。国が必要とすればいていいが、他は排除する。理解はできるが、無条件に賛成しかねる話ではある。

「こんな道沿いにいるんなら退いてもらうしかないだろうね。話して捕まえられる?」

「通じるわけないわ」

「スレイ、やれるの?」

「わたしはシュミットと誰も殺さないと約束したもん。シュミットに睨まれて怖かった」

「峠越えるにはやるしかないな」

 ヴィンは茂みから出た。

 気づいたバイダが飛びついてきた。

「君たちの召喚主はどなたですか?」

「バカじゃないの?話なんて通じるわけないじゃないの!」

 スレイが陰から叫んだ。

「そもそもバイダの召喚主なんて突き止められるわけないわ。わたしと一緒にしないで」

 五発の銃声が響いた。こちらが悩んでいるのに簡単に殺してしまった。

 バイダが倒れた。

 ガンマンは銀に輝く拳銃を持っていた。

 牧歌的なロバがいた。

「これはわたしのものよ」

「はあ」

「五頭で五シルベか。この近くに保安官事務所ない?」

 教えてやると、

「戻らないといけないのか」

 面倒そうに呟いた。

 中折れ拳銃に弾を込めなおして腰のホルスターに戻した。銃身に天使の彫刻が見えた。

「運ぶの手伝ってくれれば一シルベあげる」

 ヴィンは馬に死体を乗せた。

 スレイを見て、

「賞金首よね?」

「これは僕のものだよ。ここに逆送するための書類もある」

「わたしはロペ。こうしてしがない賞金稼ぎしてるけど、人様のもの奪うほど落ちぶれてはいない。あなたはラマル族なの?」

「スレイ」

「はじめまして」

 峠を越えたと思えば、また峠を戻らなければならないと笑っていた。

 峠を越え、左の町に入った。

 保安官事務所で手続きをした。老保安官が獣を一つ二つと数えて書類に書き込んで、ロペがサインをして五シルベ銀貨を受け取った。

 一シルベ渡してくれた。

「あんたたちどこへ行くの?」

「ノルス」

「アマンダ伯爵のいるところね」

「ご存知なんですか」

「名前くらいはね。鬼のアマンダ。わたしは何とかという村へ行くのよ。名前忘れた。賢者様がいると聞いてね。ご存じ?賢者様」

 隣で聞いていた酔っ払いたちが、

「賢者様?ダルツ殺しの悪人だろ。今じゃ何の罪もない人を殺して英雄様だ」

 ガヤガヤと笑った。

 ロペはヴィンにニコッとした。素早く拳銃を抜くと、男たちの足もとに六発撃ち込んだ。 

 凄い早撃ちだ。

「紳士の皆さん、人の話に割り込むときは礼儀をわきまえてね。わたしに撃たれたから斬られなくて済んだのよ。抜いてたら死んでるわ」

 ほがらかに弾を一つ一つ装填した。

 ヴィンも剣から手を離した。

「これから賢者様に会いに?」

「お話できるかななんてね」

「何の話ですか。僕は彼の弟子なんです」

「まさか偶然にしてはできすぎだけど。特に何も考えてない。何か楽しいこと話せるかな?」

 ロペはロバをひいた。

 また会えるかもね。

「スレイ、あなた魅力的ね。バイバイ」

 スレイも軽く手を振っていた。

 彼女は尋ねた。

「シュミットてやさしいの?」

「怒らせなければね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る