MIZUTAMAN

飛鳥 進

プロローグ

「待ちなさい!!」


 静まり返った深夜の銀座を一人の女性が駆けっていく。


 彼女の名前は、須田 煌すだ みやび。年齢、23歳。今年で24歳になる警察官だ。


 だが、彼女はただの警察官ではない。公安部外事X課に所属する所謂、エリートな刑事だ。そして、煌の仕事はテロ組織とかそういったものと戦うものではない。


 彼女の任務は地球に潜伏する宇宙人の取り締まりだ。そして、今、地球の平和を乱すならず者の宇宙人を逮捕しようと一生懸命、追いかけていた。


「止まらないと撃つぞ!」


 煌はスーツの懐から拳銃を取り出す。ここで説明しておくと、対宇宙人に対しては、銃の傾向及び使用を許可されている。しかも、その拳銃はコルトガバメントM1911かつ電磁小銃へと改良されたものだ。

 つまり、弾が飛ぶ代わりにレーザーが飛ぶという代物だ。


 その拳銃を目の前を走る相手に向け、まず、威嚇射撃を一発撃った。


 相手の横を掠め、相手は走っていたのに立ち止まり煌の方を振り返る。


「ウッソ」

 まさか立ち止まるとは思わず、煌は警戒しながらゆっくりと近づいて行く。


「動かないで!!」


「動かないよぉ~」相手の宇宙人は気持ち悪いトーンで返事をする。


「両手を組んで、跪いて!!」


 相手の宇宙人はゆっくりと両手をあげようとしたその時、口から人間のものとは思えない長い舌を伸ばして煌の銃をひったくる。


「きゃっ!」

 銃をひったくられて、しかも、舌ときたからもうっ! 気持ち悪いのなんのって。


「ひっひひ」宇宙人は煌に銃を向ける。


 このままじゃやられる。そう思った時。


「レディーに向けて良いのは拳銃じゃなくて、花束だぜ。ベイビー」


 そう宇宙人の背後からキザな台詞が飛んできた。


「え? 誰?」


 そこに居たのは水玉模様のマントをしたバットマンのようなスパイダーマンのようか、はたまた仮面ライダーみたいなコスチュームをした男? が立っていた。


「貴様は!?」宇宙人がそう覆面の男に問うと「MIZUTAMAN」と片言の日本語で答える。


「水玉ん?」煌は男の様子を伺う。


「水玉ん、じゃない。ミズタマンね。ミズタマン。因みに俺が付けた名前じゃないから」


「ンな事、知るかっ!! 死ねっ!!!」


 宇宙人は速攻で銃を自称・ミズタマンに向かって撃つ。


「うわぁ~」

 某演技な感じの声を出して倒れこむしぐさをする。


「やられちゃった・・・・・・」


「んな訳あるか!!」

 ミズタマンは地面に倒れこまず、すぅ~っと立ち上がると左手首に付いているブレスレットの◇部分時計回しに二回、回す。すると、右手首の先が光だし、その光の中からブレードが飛び出す。


「剣!?」


 煌が驚く暇もなくミズタマンは、宇宙人が発砲するレーザー弾を剣で弾き、叩き切った。


「倒した・・・・・・」


 ミズタマンは煌の銃を拾い、つかつかと近づいてくる。


「殺したの?」銃を差し出してくるミズタマンにそう質問すると「安心せぇ、峰内じゃ」侍言葉で返事をするミズタマン。


「ありがとう」


「Your Welcome(訳:どういたしまして)」


 ミズタマンはすぅ~と、姿が消えていく。


「え! 飛ぶとかじゃないの?」


「飛びません」そう答えたミズタマンはパっと姿を消した。


「じゃあ、何のためのマントだよ」


 煌は首を傾げながら、気絶する宇宙人に手錠を掛けるのだった。

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