第68話

それにしても女子って話好きだよな。


来るたびに「もう会話ねぇよ~」と明日の話題作りに頭を悩ませる俺のことなんて露知らず、次から次へとポンポン話のネタが飛び出してくるものだから敵わない。




ケタケタと腹を抱えて笑うひなたのスマホが、音を立てて主を呼ぶ。


ついに来た!―――そんな俺の予想を裏付けるように、ひなたは急に焦った口調を装ってこんな事を口にした。







「ごめん!お姉ちゃん、ハルコちゃん。今日デートなのすっかり忘れてて、彼もう家の前まで来てるって…」


「あら!ひなたってば~」


「本当ゴメン!なんだけど、ハルコちゃん方向音痴だし、お姉ちゃん駅まで送ってあげてくれない…?ダメかな?」






合わせた両手の中でチラリ、様子を窺うように瞳だけ覗かせるひなた。


演技上手いなコイツ…なんて思いながらも、さくらさんの反応が気になった俺は彼女の方を見遣る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る