第6話 城壁の街
街の中に入れた。
身分証も何も無いので、通行料として銅貨5枚も取られた。よかったよ、銅貨を持っていて。
「これは預かり証だ、出るときに銅貨2枚戻してやる」って言われて紙切れをもらった。
面倒な・・・最初から銅貨3枚で自由、というのは駄目なんだろうか。
一応、不審者対策なんだって・・・出入りの確認だろうな。
この街は、ライトニア王国でも、最南端の貴族領で、サザンロード辺境伯領というらしい。
*サザンロード辺境伯領
門番に聞いたギルドに向かっている。といっても既に目の前に見えてる。
大きな建物が二つあって旗がなびいている。
一つはドラゴンとクロスした剣の模様、もう一つはそう!金貨の裏に刻まれていた模様だ。
冒険者ギルドと商業ギルドってことだろう。
とりあえず、混雑していない空いている方、商業ギルドに入っていく。
「いらっしゃいませ、本日の御用は?」
ま、村では見たこともないような美しい身なりの整った女性が声をかけてくれてる。
「すみません、田舎から出てきたばかりですが、教えて欲しいことがあります・・・」
いろいろ聞いてみたが、邪険にあしらわれるようなこともなく丁寧に教えてくれた。
ギルドには誰でも入会でき、会員登録はできるし口座も持てる、成人であれば。
誕生日を過ぎたばかりだが、一応、成人ってことで良いらしい。
年会費がかかる、銀貨1枚という。
口座預金は幾らでも良いらしい。王国内の他の貴族領にあるどこの商業ギルドでも入出金が出来る。少額の場合には手数料を取られるが銅貨数枚らしい。口座の残高に応じて金利が付く。
口座残高金貨100枚までは金利は年間3%、100枚から1000枚までは金利5%、それ以上は相談ということだ。金利というものについても教えてくれた。
ま、今、手持ちで100枚は無いし、僕は3%ということだろう。
金貨10枚で口座を作れば、3%で、銀貨3枚の利息。年会費は銀貨1枚だから、実質銀貨2枚の利息か・・・
でも、預けておくだけで増えるんだ! 銀貨100枚が一年後には102枚になる。
小袋に手をあててお金を確認してみたら、手持ちで金貨28枚、銀貨50枚はある。
全部というわけにはいかないが、金貨15枚くらいなら?どうだろう・・・
金貨15枚で商業ギルドに入会しておいた。
ちなみに・・・ってことで教えてくれたのは・・・
冒険者ギルドでも(冒険者)預金口座を持てること、会員登録には最初だけ銀貨1枚必要なこと、冒険者ギルドでは依頼達成でランクを上げる必要があり、依頼を受けないという選択肢は無いそうだ。
強制的に依頼を受けて働く必要がある。依頼の最中に怪我をしたり死んでしまうこともよくある・・・それは自己責任だと。
なるほど、感覚的には分かっていたが、僕には無理だ! 依頼のノルマをこなすことはできないだろう。
さらに、商業ギルドでも魔物の買取、素材の買取はしているという。冒険者ギルドの買取よりは少し安いらしいが・・・
ちなみに、ゴブリンの魔石はいくらで買い取ってもらえるのか聞いたら、
「はい、こればかりは冒険者ギルドでも、こちらでも同じで、一個銅貨1枚となります」
だって・・・
つまり、ゴブリンの魔石6個の売却で銅貨6枚。銅貨10枚で銀貨1枚だから・・・ゴブリン魔石は10個単位で考えた方がよさそうだ。
ま、今は売るのは止めておこう。
それと、やはり、冒険者ギルドの方は僕には無理だろうな・・・
特に当てもなく領から出てきた。通行証の紙を渡して銅貨を2枚返してもらった。
今度入るときには、商業ギルドのカードがある。ははは・・
でも、これ、これで口座からの出金ができるんだけど・・大丈夫なのかな? さきほど質問して確認しておいた。
「お金を引き出す時に分かると思いますが、そのカードにはすでにあなた様の魔力が登録されておりますから、カードの魔力が異なる誰かがそのカードを使うことはできません」って断言された。 どうやら照合されるらしい。
なるほど、村ではそんなこと考えられないことだった。
城壁の外へ出てどうするか?って? 実は、城門のところで荷車に荷物をたくさん積んだ人が通っていったんだ。
門番との話が聞こえてきて、どうやらあの荷物はゴミの山で、あの人はゴミの回収業者だったらしい。
なので、その後を追っているんだ。彼の行った方向へ向かっているってわけ。
きっと、こっちにもゴミ捨て場所があるんだと思う。
今の僕にやれることをしよう。ゴミ漁り。
ゴミを見れば、街の人たちの生活具合もわかるかもしれないし、ひょっとして、何か・・・掘り出し物があるかもしれないしな。
人通りが少なくなってきた。
今、僕の目の前を行くあのゴミ回収業者の荷車だけだ。まだ遠く先にいるけどやっと追いつけた。
先の方にゴミの捨て場らしき景色が広がってる。かなり広い場所だ。
広く穴を掘って、そこにどんどん不用品を捨てるようにしてるみたいだ。
しばらく近くで彼の様子を見させてもらっていた。
特に集めてきたゴミを調べるでもなく、ただ単純に荷車からその場所へゴミを捨てているだけだった。ただ、一応、残飯、木製の物、金属、ガラス、そしてその他と、最初から分けて積み込まれていたのでそれぞれ捨て場も分かれている。
*ゴミ捨て場
それにしても~ すごい量のゴミだな。
調べようなんて意気込んで来たは良いが・・・途方に暮れて見ている。
ま、とりあえず、周囲から見て回る。ゴミ山の周囲にあるものは新しく捨てられたものだろう?
金属のゴミ、錆びてぼろぼろのナイフや包丁。剣もあるが錆びた鉄剣や銅剣。こんなのは鋳つぶして使えないのかな? そんな手間のかかることはしない?
錆びた物を拾っては奥のほうへ放り投げているが、場所を動かすな!とか文句を言ってくる人もいない。
と、錆び付いた鉄の小箱も出てきた。蓋も錆び付いていて開かないが中に何か入っている感じ。
なんだろうな~
錆びた小箱を両手でグニャグニャするように揉んでいたら・・・開いた!
中身は紙にくるまれた指輪だった、宝石は付いていない。
ちょっと僕の指には大きいな~って思いながらも左手の中指に通してみた。
やっぱり、グルグル回って少し大き目だ・・・・が! あれっ!ピッタリはまってる。
なんだ? 不思議な指輪だな。
何か不吉なもの?とも思ったが・・・僕に異常はない・・・と思う。
一応、獲得耐性を確認してみたが、特に新しく増えたものは見当たらない。
ま、良いか・・・何かあればそのうち分かるかも?
*指輪を拾った
少なくとも鉄製の箱に入れられていたんだ、忘れ去られて箱ごと捨てられたんだろうか。
きっと、何か特別な物かもしれない。僕には分からないけど。
それはそうと、この指輪、全然錆びてない、鉄ではない・・・金でも銀でも無い。
なんだろうね・・・
そういえば、ゴミの馬車のところで拾ったナイフもこんな金属だっけ? この金属って何?
またここには来よう・・・
領地の城門へ向かって歩き出したよ、のんびり。
かなり歩いて、もうあのゴミ捨て場からも随分と離れたところを歩いている。
ああ・・・見てはいけないモノが見えてる。
道路から逸れた場所で、女性が二人、むさ苦しそうな男たち4人に攻められているようだ。
「だから~ ヤダ!ってば~ 近寄らないでよ!」
「いやいや、楽しいことをしようぜ!っていってるだけだろ」
「だから~ あんたたちとなんて何もしたくもないから!~ 消えてよ!」
「ははは、良いのか?そんなことで粋がってもなぁ~ お前ら新人だろ? 俺らはCランクだ、どうあがいたってかなわねぇぜ? 痛い目をみるよりはよ~ 俺らと遊んでた方が身のためだろ?」
「ふん! 誰が~ あんたらなんか~~~ 誰か~~」
「ははは、だからやめとけって、こんな辺鄙な場所だ、誰が来るって?」
「・・・誰か~ 誰か!~ 助けて!~~~~」
ま、なんかよくは分からないが、襲っている男たちと、困っている女性が二人いる、という状況。
それを知ってるのは・・・僕だけか~
何が出来る? 奴らはCランクって聞こえてたよ? 冒険者だろ? それなりに強そうだ。
「やだ!~ たすけて!~~~」
おっと、腕を掴まれて一人は体ごと持っていかれてる・・・ま、どうとでもなれや! と、飛び出した。
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