第54話

宝くじ売り場の前で、その場にそぐわない高級そうなスーツに身を包む男。


その表情は私のそれと大して変わらない。それはきっと、相違ない。




「…………」



喉の奥にベッタリと貼り付いてしまったように、声が全然出てくれない。







だって、似過ぎてる。


驚いたときに見せる表情も、

すらりとした立ち姿も、

顔のパーツとかも、


全部、全部全部全部――――……








「――――……ッ、」








か細く、死んでしまうような声で呟いた。




「………、さん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る