第51話
ブランド物のバーゲンで安く手に入れたポーチをデスクに置き、さあ仕事だと意気込んだ私はおもむろに鞄へと腕を伸ばした。
そして100均で買ったファイルに収めておいた一枚の紙を抜き取ると、確認の意味でその内容に視線を走らせる。
「(今日は10時からあそこの会社と商談……うわー嫌だな、あそこ変なオヤジ多いから)」
きゅっ、とキャップを外した黒のインクをホワイトボードに走らせる。
するりするり、描かれていく字はヘンテコでミミズみたいだった。下手くそ、といつも彼女に貶されているけれど、余り反論も出来ないと切に思う。
最後に思い切りキャップを閉めてボードのふちに転がすと、直ぐに割り当てられたデスクに戻ろうと踵を返した。
――――――――――――…
午前11時12分。都内のあるカフェバーにて。
「本日は有難うございました、近いうちにまた御挨拶に伺いますので」
「本当? 君が来てくれるの?」
「出来る限りそのように致します」
おいおいオッサン、もう話はまとまっただろ?帰ろうか、うん。
ほら早く荷物まとめてとっとと失せな!くそったれ!
言わないけど。そんなこと言ったら間違いなく失職だけれど。
ロボットのように同じ返答を繰り返す私は、見るひとから見ればそれはもう凄まじいほどの素っ気無さだったと思う。
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