第2話 動機

 初恋をした。それは応えてもらえない想いで破れてしまった。忘れようと泣いて諦めて、やっぱり好きになった。きっと、私はバカなんだと思う。じゃあ、私はその好きのためにバカでいよう。愚かな小娘であれるうちは突っ走ろう。だって、欲しいものは欲しい。好きなものは好きなのだ。



 王国の高位貴族の妾腹生まれの令嬢。生まれた時から正妻であるおかあさまをおかあさまとして養育されななつの年までお世話してくれていた乳母が実母であったと聞いた就学前の十歳女児アガタ・フローレンスです。

 自らの身分を弁えるようにとおかあさまに説明されたその夜に私はこのゲームを遊んでいた前世を思い出した。

 剣と魔法、魔物と迷宮。学園と恋愛。王子様を含むイケメンたちと数々のイベント。一夫一婦制ではない合法ハーレムエンド用の世界観。

 私は別に悪役令嬢ではない。悪役令嬢はもっと高位の令嬢だったはず。

 だからといってモブでもない。

 それなりに可愛いけれど、(どちらかと言えば育てゲー。恋愛はオマケ)私は平民になることもいざとなれば王子様の妻にもなれなくもない身分があるという中途半端な立場。いっそサポートキャラだったらよかったのにと思ってしまうヒロインの立ち位置だった。

 そして、私の好きな人は攻略キャラじゃないんだな。これが。どうしようかと掃除の行き届いた天井を仰いだ。

 自身と恋を育むメイン舞台は全寮制の学園。

 だから、私は第二王子の愛人エンドを目指す。

 王子にとっての本命でなく、将来的に下げ渡される前提でそばに侍るひとりとして。

「おっしゃー、気合入れるぞーーー!」

「お嬢様、お屋敷ではないのですから行動発言は慎まれますように」

 学園の寮、乳兄弟にして幼馴染みでもある侍女見習いのメープルが冷たく告げる。

「あ、はい。気をつけるわね」

 これは恋愛ゲームではなく自由度の高さが売りな育成ゲーム世界に主人公転生した私の物語である。





 六割の登場人物は攻略キャラなのになんで自宅の従業員は対象じゃないのよぉおおお。


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