第3話 栄養豊富な畑のお手入れ

「ふあ~」


「おはようございます。料理の支度は出来ていますから顔を洗ってきてくださいね」


「おう」


 昨日と似た様なやり取りをした俺は顔を洗って食卓に着く。

 テーブルの上には豪勢な朝食が広がっている。


「朝は軽めにカイザードラゴンの肉スープとマンドラゴラの煮物、アルラウネの球根焼きです」


 スラスラと手足の生えた剣が朝食の説明をする異様な光景をあえてスルーする。

 料理に使われた食材も気にしない事にする。

 我慢だ我慢。ここで突っ込んだら相手の思うつぼだ。

 そして悔しいが朝食は美味い。


「ご馳走さん。美味かったよ」


「それはなにより」


 食後のお茶を飲みながら、剣が洗い物をする異常な光景を眺める。


「これで女だったらまだなぁ」


「はははっ、聖剣が人になる訳がないじゃないですか。おとぎ話の読み過ぎですよ」


「剣がそのままの姿で恩返しに来る方がどう考えてもおかしいからな!?」


 くっ、しまった、つい突っ込んじまった!


「そうそう、裏庭の雑草が伸びていましたから、今日は畑仕事をした方がいいですよ」


「お、おう。そうか。わざわざ悪いな」


 草むしりか。面倒なんだよなぁ。でもやっておかないと畑の栄養が雑草に盗られちまうから、やらない訳にはいかない。


「そんじゃ頑張って草毟りすっか」


 茶を飲み終えた俺は、草刈り鎌を片手に裏口から出る。

 そして伸び放題になった雑草を……


「ギギャー!」


「ギャギャギャギャ!」


「ゴポポポピッ!」


 バタン。

 そっと身を昼がして居間に戻る。


「おや? 何か忘れ物ですか?」


「どういう事だぁぁぁぁぁぁっ!!」


俺は洗い物をしている聖剣を問い詰める。


「どう、とは?」


「庭だよ庭! 雑草どころか魔物が居るじゃねーか!」


 しかもなんか怪獣大決戦みたいな光景だったんだが!?


「はて? 魔物ですか?」


 洗い物を中断した聖剣がエプロンで手をふきながら裏口に向かう。

 いや、何で剣がエプロンしてるんだ?


「ギギャー!」


 聖剣が裏口の戸を開けると、その向こうにさっき見えた植物の魔物が見える。

 ああ、やっぱり見間違いじゃなかったのか……


「魔物なんていませんよ?」


「いるじゃねーか! そこに!」


 こいつの目には目の前で雄たけびを上げる怪物の姿が見えないのか! いやそもそも剣だから目なんて無いんだが……無いよな?


「ああ、あれは魔物じゃありませんよ」


「は?」


 アレが魔物じゃない? だったら何だって言うんだ。


「アレは魔王とカイザードラゴンの養分で成長した雑草ですよ」


「何で雑草が怪物になるんだよ!」


 結局コイツの所為じゃねーか!!


「過剰な栄養と瘴気で大型化したみたいですね」


「滅茶苦茶雄たけびあげて喧嘩してるのにデカくなっただけで済ますな!」


 寧ろ魔物よりもタチ悪いだろ!!


「しょうがないですねぇ」


 聖剣はエプロンを脱ぎ、ドアの取っ手にひっかけると畑に向かって歩いてゆく。


「「「ギャギャギャー!!」」」


「お、おい! 危な……」


 互いに喧嘩をしていた化け物雑草達が自分達に近づいてきた聖剣に雄たけびを上げ、襲い掛かる。


「遅いですよ」


 瞬間、聖剣の姿がブレる。

 次いでキンッという音が聞こえたかと思うと、聖剣をかみ砕こうと牙を剥いて襲い掛かって来た化け物雑草達が真っ二つになった。


 ドサドサッという音を立て、地面に落ちる化け物雑草達。


「ねっ、魔物と比べれば大したことないでしょう?」


「大ありだよーっ!! どう考えても大したことあるっつーの! 見ろよこのデカい牙! 口の中がのこぎりみたいにギザギザの牙で埋まってるんだぞ!? こんなんどうやって倒せってーんだ!」


「切れば良いのでは?」


「出来るかぁーっ!! こちとら普通の人間だぞ!」


「やれやれ、人間は脆弱ですねぇ」


「脆弱なんだよマジで!」


 くっ、コイツマジで感覚がズレてんだよ! 普通の人間にこんな化け物倒せるわけねーだろ!


「いいから畑を元に戻せ!」


「ですが既に魔王とカイザードラゴンの栄養は大地に浸み込んでいます。これらを掘り起こしてもしばらくは栄養豊富な植物が育ちますよ」


「何でそれで大丈夫って思ったんだよぉ~~っ!」


「私は大丈夫ですから」


 このクソ剣、へし折ってやりたい!!


「まぁ仕方ありません。勿体ないですが持ち主が手入れできない畑ほどナンセンスな者もありませんしね」


「今までは手入れできてたんだよ!」


 ああ、マジで畑が戻るまでどうするよ……

 そんな風に頭を抱えていた時だった。


『出てこい勇者!!』


「っ!?」


 突然町中に響き渡るような声が聞こえてきた。


「な、なんだぁ!?」


 決して大声という訳でもないのに、響く不思議な声。


「これは通信魔法を応用した無差別放送ですね。本体は上空にいますね」


 聖剣が指さしたそれを見ると、そこには黒い翼の生えた人影が見える。


『我が名はマルリアンナ! 魔王ガーランダルの娘だ!』


「って、魔王の娘!?」


 何でそんな大物がこんな微妙な町に!?

 この町で話題になるものなんて聖剣…………


「なぁ」


「なんですか?」


「お前が狩ってきた魔王の名前って……」


「確かガーなんとかって言ってましたねぇ」


『貴様が誘拐した我が父を、返してもらおうかっ!!』


「ご家族じゃねぇか!!」


 またこいつが原因かよぉーっ!!

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