第10話 夜明け前の星占い「夜明け前、まだ見ぬ運命を予言する占い師——あなたの選択は?」

静寂に包まれた路地裏に、小さな占いの館があった。


 看板には、古びた文字でこう書かれている。


 「夜明け前の星占い——運命はまだ、書き換えられる」


 訪れる者はほとんどいない。だが、この店には、ある噂があった。


 ——この占い師は、まだ起こっていない運命を見る。


 青年・颯真(そうま)は、その噂を頼りに、夜の街を歩いていた。


 未来に迷い、進むべき道を見失っていた。


 薄暗い灯りに照らされた店の扉を押すと、中には一人の占い師が座っていた。


 「あなたの運命を、見てみますか?」


 静かな声。


 占い師の前に座ると、彼女はそっと水晶玉に手をかざした。


 「あなたの未来は、今夜決まるでしょう」


 水晶の奥に、揺らめく星の光。


 颯真は、息をのんだ。


 「あなたは、大切な選択を迫られます。そして——」


 占い師が目を伏せる。


 「その選択によって、一つの命が消えるかもしれません」


 胸が、冷たく締めつけられた。


 「それは……僕が誰かを傷つけるということですか?」


 占い師はゆっくり首を振る。


 「まだ決まっていません。あなたの選択次第で、運命は変わるのです」


 彼女の指先が、水晶の中の光をなぞる。


 「あなたが本当に大切なものを選べば、運命は——」


 その言葉の続きを聞く前に、夜が明けた。


 気づけば、颯真は占いの館の前に立っていた。


 占い師の姿は、もうなかった。


 まるで、最初から存在しなかったかのように。


 だが——


 彼の胸の奥には、確かに刻まれていた。


 「運命は、まだ書き換えられる」

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