第13話

あの日から生きてて良い理由が見つからない。



おばさまたちはあの子が大切にしていたものだからと私を住まわせてくれた。


だけど大切なものを失った心は、徐々に黒く染まってく。


その過程を近くで見てきた。



ヒカリのことを大切に思う人はたくさんいる。


その人たちに同じ思いをさせてしまうわけにいかない。その人たちが悲しめば、きっとヒカリも悲しむから。



私は願ってはいけない。

望みは叶ってはいけない。


だから人間はカラーレスを創ったんだと思う。




「…さようなら、ヒカリ」




もう会えなくて。此処には来てはいけない。もっと早くこうすればよかった。

帰ろう。帰って、おばさまと話をして、それで、自分がどう在るべきかを考えよう。


今まで私に居場所をくれていた人を苦しめない答えを出したい。



これ以上裏切りたくない。




「サンの気持ちはねーのかよ」




縋るような星色の瞳。


強さも、弱さも、優しさも、すべてが込められたようなその目が、本当に好きだった。



一緒に生きたい。


キスをするのではなく、ぐ、と想いを飲み込んだ。




「カラーレスに感情はありません」



答えることを拒んだ。



「そんなこと、本当はないんだろ」


「…ねえヒカリ。次は、きっときみと同じものに生まれてみせるから」


「次……?」



だから泣かないで。


あの子を助けられなかった無意味な私をすくってくれたヒカリのことを、想って、次は命を持って生まれてみせるから。



「その時もしまた出逢えたら…この気持ちを伝えさせて」



身分も、時間も、何も気にせず会える日々を、祈るよ。


だからせめてきみもそうしていて。



こんな気持ちで夢から覚めることを、どうか許して。

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