第4話
第3話
「決別と過去の清算と」
夢は決まっていつも同じものだ
『パパ・・・ママ・・・みんな、どこぉ?』
薄暗い廊下をぺたぺたと歩く
『みんな・・・どこぉ?へんな、においする・・・。』
何処からかするその臭いを辿っていくと玄関の広間が燃えている、そしてその炎の向こうに父親と母親が倒れているのをみる
『パパ・・・!ママ・・・!!』
『いけません、ぼっちゃん!!』
後ろから抱きしめられるとメイド長がいる
『放して!パパが・・・ママが・・・!』
『そんなことよりも逃げるのですよ!』
そういった彼女は手を引いて自分を連れて逃げ出そうとした。
そして、待ち伏せしていた奴らに殺されたのだ。
気が付いたときには自分も大怪我を負って、体中に包帯が巻かれていたのを覚えている
『・・・よかった、貴方だけでも無事だったのですね。』
そういって夢の中でも微笑む女王の姿は今と一切変わりなく・・・。
「・・・・夢、だよなぁ。」
と白みがかった空を窓から見ながら欠伸をかみ殺す。
あれは、俺がアシェン・ラヴェント・ウィザディアとして人生最悪の日だった。
没落したといえばそうなのだろう、なにせその日自分以外すべての人間が野盗に襲われて死んだ。
いいや、野盗を引き入れたやつがいた。
でなければ少なくとも王国騎士長という座についている父親の権限からして家の警備が薄すぎた。
その復讐のため、俺は居心地のよかった城での生活を捨てて、こうして此処にいる。
反王政勢力(レジスタンス)・・・・今やそれを率いる地位にいるのは既に終えた復讐の一端が終わった結果であり、元の居場所に戻ろうという想いがあんまりないのだ。
少なくとも、俺がいなくてもあの城は平穏のままだ。
気ままにこうしている方が正直性に合うのかもしれない。
「ん・・・・?」
ピリッとした気配を感じる
やれやれ、朝からご苦労なことだ、王国の暗殺部隊らしい。
「こんなしがない一軒家でおっぱじめるなよ。やるなら外でやろう・・・ぜ!」
と2階の窓からひらりと飛び降りる。
「な・・・ばかな!」
と降りてきた二階から顔を出す黒い布を顔に巻いたやつらが2、3人
それらを見てからニヤリと笑ってやるとすぐに追いかけてくる
けど、やつらは追い付けるわけがない。
同じ王国に住むものだとしてもこちらには15年間で裏通りのすべての道を知り尽くしている、そして・・・なおかつ
「この地域(シマ)で反王政勢力(俺たち)がなんにも仕掛けてねぇわけねぇだろ!!」
全力であらゆる場所にある罠の安全装置を外していく。
相手も勝手知っている道だろうが罠によって追いかけられなくなってくる。
そうすれば、あと丸裸になるのは・・・敵の総司令の首だけだ。
「・・・あの位置か。」
暗殺部隊の奴が投げた狼煙が建物の上を指す。
市街地にある建物の屋上にはあらゆることを想定しあらかじめ武器が隠してある。
そのうちの一つの建物の階段を上がり隠してあった狙撃銃を持つ。
軽く手入れの具合を見て弾がこめてあることも確認し、スコープを覗くとやつらがまだ探しているのをみつけた。
手に震えは…少しだけある。15年も同じことをしておきながら何をいまさら震えることがあるのかと自嘲気味な笑みを零しながら、俺は引き金を引いた。
あっけなく奪われる命に敵が逃げ出しかけるのを追い打ちで撃ち殺す。
誰も逃してはならない。
乾いた銃声が響き渡り終える頃には追ってきた相手は全滅していた。
しかし、敵の総司令官は結局見つからなかった。狼煙を上げた先にいると思ったのだが、すでに逃げられた後だったようだ。
「仕方ない、また今度ゆっく・・・り!?」
殺気を感じて直撃を避けようとしたが刃物が当たる感触が左頬を突き抜けてヒリヒリとする。おそらく血が出ているのだろう。
「・・・おいおい、部下を殺されたくらいでそう殺気立つなよ。」
肩をすくめながら狙撃銃からは手を離さない。
相手の居場所がわからないのにむやみに弾の消費は避けたかった。
「だんまりを決め込むつもりか?あんたの部下はもういない、敵討ちなら正々堂々と来いよ。」
「獲物を持っておいて正々堂々とは片腹痛い。」
と物陰で人影が動く。
「あいにく今手持ちの獲物がこいつしかないんでね。」
「なれば大人しくその首を渡すがいい。貴様の命と引き換えにこの国は平和となるのだ。」
「・・・なんだ、それ。」
思わず吹き出してしまう
「悪いが、齢18年生きているがあんたの言う平和とやらは先代のリーダーが死んだときもなかったぞ。そりゃただの正義感からくる暴力だ。」
「黙れ!貴様らのようなゴミどもがいなければこの国は今頃もっと豊かに、平和になっているのだ!!」
「・・・ゴミ、ねぇ。まぁいいや。・・・そこにも罠ないと思ってるのか?」
「何・・・!?」
物陰から飛び出してくる人影
「・・・・残念、嘘に決まってるだろ。」
銃声がもう一発響いた。
「・・・東洋にいるって聞くニンジャみたいな恰好だな。こいつら」
と先ほど仕留めたばかりの相手に近づく
一応ヘッドショットだったのでよほどのことがない限りは動くなんてのは万が一にありえないのだが
「その面、拝ませてもらおうか。」
と顔を覆っている布をとる。
出てきたのは、初老の男だ。
「・・・・ああ、なんだ。あんただったのか。ティルシアさん。」
一度だけ、城住まいの時に会ったことがある。皇子様たちと遊んでいて城の調度品を壊して怒られたことがあった。
「しょうがないよな・・・こんな時代だもんな。あんたの役目、どうにかならなかったのかね。」
と少し感傷に浸りながら俺はアジトに戻った。
―昼―
執事、ティルシアの死は昼頃に女王の耳へ入った。
憲兵が見つけたときにはすでに亡くなっていたと聞く。
「ティルシア・・・・。どうして、私を置いていくのでしょう。」
そう嘆きながら棺を眺める女王に、その場にいる全員が黙とうを捧げた。
遺体は城の地下に一度安置され、次の日に国葬をすることになった。
ティルシアの自室は女王の命令により、しばらくそのままにされる。
彼の持っていたメモ帳だけが、女王に届けられた。
「・・・・・ティルシア、貴方。」
メモには一言
『過去の罪への清算を』
と書かれている。
「・・・・あなた、勘違いしてしまったのね。」
そういって微笑む女王の目は笑っていなかった。
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