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第22話

辺美さんの家へ行った翌朝の今日はファッション雑誌の撮影があったから、昨日の夕食は何も食べずにプロテインとサプリメントだけで済ませ、早くベッドに就いた。


だから気づかなかったのだろうか。


メイクさんと話している途中、スマホの画面が明るくなったから開いてみると、数日前のやりとりに茉優來からスタンプが送られていた。



「……あれ、DMリクエスト来てる」


「ファンの人ですか?」



それから、フォローしていない公式アカウントからインスタグラムのDMリクエストが届いている。



「……あ」



《突然すみません、辺美です。昨日は本当にありがとうございました!おかげさまで今日から仕事できます。エコバッグ、忘れ物ですよね?今度来る時まで預かっておきます。》



「知り合いでした」


「なあんだ、びっくりしましたよ」



あはは、と笑って誤魔化した。


そうだ。昨日あのまま帰ってご飯作ってないから気付かなかったんだ。と、納得して、一旦メイク台の上にスマホを置いた。


けれど、問題はどうやって引き取るかだ。


この前は彼が病人だったということもあって、咄嗟のことであまり考えないでいたけれど、仮にも一度ホテルに誘われた身だ。さすがに私もいい歳をして、易々と男性の根城に飛び入るような真似は出来ない。



《わざわざありがとうございます。体調、良かったです。今度買い出し行かれる時に連絡頂けませんか?近所ですし、買い出しのついでに受け取りに行きます。》



考えた末、思いつく限りのベストアンサーを返した。



「エトさん、眉間にすんごいシワ」


「え……あっ、危な」



私って考え事してる時こんな変な顔してるんだ。


自分自身について、知りたくなかったけれど知れてよかった新しい発見にまた気分が落ちてしまった。



昔から、面倒くさい、という言葉はなるべく使いたくないと思っている。口に出せば余計にそう感じ始めるし、思うだけもなんだか無駄にネガティブな思考が活性化するような気がするから。


けれど、回避不可能な複雑な事象に対して、そう思わずにいられない時だってある。不可抗力というやつだろうか。


嫌いとか、好きとか、そういう問題ではない筈なのだけれど、ただ単にその行動を起こす事自体が、なのだろうか。



「……はあ、めんどくさいなあ」



分からない。心臓がずっしりと、地面に向かって沈もうとするような感覚に少しの嫌悪感を覚える。


どうして、何に、面倒くさいと思っているのか、絶妙に理解できない自分自身の心境に対して、めんどくさいな、と思った。

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