第20話

「まぁ、無理もないよね。今は人気漫画家だもんね? 新作の黒くんと白ちゃん読んだよ、麦ちゃんらしくて良かった」






 はぁ?






 何言ってるんだろう......。






 この男に、ゆるふわモフモフの日常漫画を理解できるなんて......まぁ有り得ない話しだ。







 適当なゴマすりだな......。







「そうですか......ありがとうございます」







「完全な棒読みだね、でも可愛い」








「褒めても何も出ませんよ」







「出さなくていいよ、逆に俺が出してあげたいくらいだからね」







「別に要らないですよ、見返りか怖いですし」






「見返りかぁ......いいね、それ」







 ゾワッとその笑顔で体が本能的に危険を察知し、ざわつく。






「全然、良くないですから」







「そう? いいと思うけど」







「はぁ......あのもう消えてもらっても良いですかね......正直いって迷惑です」







 彼から視線を外し、地面を向く。








 早く、どっか行ってくれないかな......。







「あ、もう3時だ......」







 誰のせいだと思って......。







「そうですね、もうお互いお家に帰って寝ましょうよ。疲れました」







「俺は、久しぶりに会えて本当に嬉しいよ」







「はいはい、そうですか」








「俺さ、別に今までただ麦ちゃんの事放置してた訳じゃないんだよ? 麦ちゃんに相応しい旦那という立ち位置に立てるように努力してきたんだよ......歴代1番若い年齢で若頭に就任してからさ......」

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