■■■■ Web Meeting(■■ゼミ勉強会 3/4トランスクリプション)

≪Eが入室しました≫


≪Dが入室しました≫


   A「二人とも入れたかな?」


D「入れました!部屋汚いので音声とチャットでお願いします!」


E「わたしも!」


   A「じゃあ俺も映像は消しとくか」


E「いいじゃん、Aはつけときなよ~!隠すもんでもないでしょw」


   A「はあ?いらんでしょ。ていうか資料を共有しながら進めるから。なしでいいんだよ」


E「残念~」


D「残念~w」


E「◇◇◇」


D「なに?」


E「ひし餅~◇◇◇彡」


D「あー!ひし餅か~◇◇◇彡」


   A「昨日でしょ。てかなんでひし餅が飛んでるんだよ。投げちゃダメだよ」

   「じゃあそろそろ始めようか。録画します」


⦅レコーディングを開始しました。⦆


D「じゃあ先週の続きからいくね。ええと、山の神様は女性が山に入るのを嫌ってると。それで、天狗も実は女性を嫌っているっていう伝承があって、類似性があるって話だったよね。参考になるのは、こんな文献かな」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「女人禁制の峯」※1


【要約】ワサラシ山の南の峯は女人禁制だ。あるときイダコが登ろうとしたが、大風に吹かれ五体バラバラになって落ちてきた。頭はカミナガシ沢に、胴体はムクロウ沢に、笠はカサ笠に落ちた。


(「岩泉聞書」『民間伝承』24(7),PP.43-45. 昭和35年12月5日)


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「天狗,女嫌い」※2


【要約】天狗は女嫌いである。その上怪力を持つので、若い女が山に入ってゆくと、股から引き裂かれたこともあった。


(「山の神のオスとメス」『伊勢民俗』5(3),PP.1-8. 昭和34年11月)


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   A「いいね」


E「ちょっと~!天狗ひどいね~。怪力の使い方間違ってるよ!」


   A「うん。ひどいね。「山の神」とか「天狗」とかって、擬人化?擬神化?して、"現象"というか"過去に起こったよくないこと"の原因を説明しているってことかな。それが「山の神」って呼ばれるか、「天狗」って呼ばれるかは地域によって違うと」


D「そうだね。そんな気がする。これたぶん元々は、女の人が山に入って、山賊とかそういう悪いやつらに酷い目にあわされたとかそういう話だよね。女人禁制って言うのは、危険がいっぱいだから、女の人は山に行かない方がいいよってことの」


E「なるほど~」


D「それで、山の神≒天狗 を示唆してる、まんまな文献もあります。こんなやつ」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「山の神様,天狗」※3


【要約】炭焼きをやっている人たちが、山の神様を祀っているらしい。山の神様は女性をけがれたものとして嫌うので女性は山に入らない。山の神のことを天狗ともいった。2月の初寅には山仕事をしている人は山には行かない。この日に山に入ると木と一緒に天狗に数えられてしまうという。


(「岐阜県郡上郡高鷲村 白山信仰」『民俗採訪』通巻昭和61年度号,PP.69-76. 昭和62年10月1日)


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「お天ぐさま」※4


【要約】金峰山は女は登ってはいけない。男の子が髪の毛を長くして登ったときにも山の神に吹きおろされ、山はごろごろ音がした。雨が降るかお天狗様がイワを落ちる音である。


(「山梨県北巨摩郡須玉町増富日向・日影調査報告」『伝承文化』通巻8号,PP.43-81. 昭和48年12月30日)


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


E「おもしろいね!天狗に数えられると木にされちゃうってことか~。お前も木にしてやろうか~」

「かぞえてんぐの元ネタなのかな~?」


   A「なんだよ。かぞえてんぐって。男でも髪が長いとダメなんだな。髪の長い男も女と間違えられて、山賊にやられたとかそんな感じか。Cとか髪長いからヤバいんじゃない?」


D「Cくんピンチ!」

「木にされる=山に埋められるとかそんなことかな。山に入っちゃダメな日は何だろうね?」


E「う~ん。労働者の権利かな。天狗のせいにして決めておかないと休めないとか」


D「おー!なるほど。そういうことね。山に入っちゃダメな日関係の文献もあります。こんなの」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「天狗,山,(俗信)」※5


【要約】旧暦2月と12月の8日と9日は山に入らない。山に入ると天狗様にさらわれるという。


(「磐城石城郡草野村より」『郷土研究』3(7),PP.55-56. 大正4年9月1日)


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「山の神」※6


【要約】2月と12月の12日は山の神の日。この日は山を休む。昔、12日に山で木を切っていた男があった。用事ができて妻が山へ呼びに行くと、夫は女に腰を抱えられて木を切っていた。妻は怒って帰り、夫が帰ると喧嘩になったが、12日に山に行って怪我をしなかったのは山の神のおかげだということになり、山の神は女と言われるようになった。


(「宮城県黒川郡大和町宮床地区」『民俗採訪』通巻昭和34年度号,PP.73-137. 昭和35年)


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E「日は地域によってバラバラなんだね~。旧暦とかもあるから何日かよくわからないや」


D「そうだね。その地域の労働者がみんなで休みたい日を決めてるのかもしれないね。その日に天狗さんお願いって」


   A「あー、二つ目、山の神は女っていうのが出て来たね。これはよく聞くよね。しかも不美人ってやつ」


D「そうそう。でも逆に、山の神様は美人って説もありました。諸説ありです。こんなのと、こんなの」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「山の神」※7


【要約】山の神は女神で、年取った醜い顔で非常にやきもち屋である。これを笑ったりすると怒りに触れる。


(「湖南に残る伝説一つ二つ―滋賀県栗田郡金勝村―」『旅と伝説』10(5),PP.53-56. 昭和12年5月1日)


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「美女」※8


【要約】穴谷の鍾乳洞には昔一人の美女が住んでいた。美女は頼めば膳椀を貸してくれり蜜柑や柿をくれたりしたが、決して顔を見せようとせず、話すときは後ろを向いていた。里の青年が無理やり顔を見ようとつかみかかったら、美女は洞窟の奥に姿を消し、再び現れることは無かった。


(「第十一章 民間説話と子どもの遊び:第二節 民間説話の種々相」『宮崎県史 資料編 民俗2』PP.945-1001. 平成4年3月31日)


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   A「へー。美人パターンもあるんだ。でも鍾乳洞だから、厳密には山とは少し違うかもしれないね」


E「美女の方は結局顔見てないから、本当のところはわかんないよ~。美人じゃないかもよ~」


D「そうだね。鍾乳洞はちょっと違うか。でもいい人っぽいよね。柿とかくれるって」


   A「うん。柿食べたくなってきた。鍾乳洞の奥にはたしかに美女がいそうだわ。鍾乳洞めっちゃ綺麗だもんね、神秘的で。これずっと後ろ向いてるってことは、顔見たらダメだってことよね?見るなと言われるとみたくなるわ。見たらどうなったんだろうね」


E「見るなの禁忌の類型っぽいね~」


D「ああ、そっか。見るなの禁忌か。さすがにそれ関係の文献は用意していないや。でも、きっといい結果にはならないよね。鶴の恩返しとか、イザナキとイザナミのあれとかね」


E「見ちゃダメなものは見たくなるよね~。Aの部屋とかね~」


   A「なんにもないわ!」


D「ふふふ。あと気になったのは、山に関する禁忌は結構色んなバリエーションがあるってことだね。これとか」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「山に関する禁忌」※9


【要約】12日、山ノ神の日に山に行くと怪我をする。彼岸に山に行くと盲目になる。彼岸の中日に伐採・魚取りをすると体が不自由になる。山ノ神の日は生木を切らない。日没後に竹を切ると死人が出る、などの禁忌がある。


(「兆占禁呪:禁」『宮城縣史 民俗2』20巻,PP.183-239. 昭和31年10月20日)


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「血の忌み」※10


【要約】女の月経をはちべいという。狩人は血の忌みをきらうため、その間夫は狩りに出ない。狩りに出る男は月経中の女に手をふれない。女ははちべいのある間は神参りをしない。


(「第二編 第二章 一 会津檜枝岐村民俗誌:(一二)産育習俗」『福島県史 第23巻 民俗1』,PP.214-215. 昭和39年3月1日)


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「山人,女の人,カメラ」※11


【要約】女が山に入ってカメラで写真を撮ったりしていると、山人に何十間も投げられてバラバラになった。女が山に入ると神様が怒るそうである。


(「藤原町の山人伝承」『女性と経験』通巻18号,PP.69-75. 平成5年10月1日)


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E「3つ目、女インスタグラマーとかやばいね~」


D「ほんとだ。これ新しいめの伝承なんだよね。神様とか天狗も進化するみたい。時代に応じて禁忌のバリエーションが変わるのかも」


   A「そうだね。インスタグラマーが絶壁で撮影しながら足を踏み外して落下したとかあったでしょ。ああいうのは天狗の仕業になって、山の禁忌になったんだろうね。昔なら」


E「なるほど~!『山で動画配信をしてはいけないの禁忌』が生まれたね~」


   A「まあ今日はこんなところにしておくか。結構長くなったし。来週はどうする?ケイビングいくから来週は休みで、再来週にする?」


D「そうだね。わたしはそれでいいよ」


E「わたしもいいよ~!」


   A「了解。じゃあ、次はEが文献調査の番だな。山の神関係じゃなくてもいいよ。好きなテーマで」


E「了解で~す」


   A「今日BにもらったデータはAIに食わせときます。ありがとう!」


D「どういたしまして!」


E「ぱくぱくモグモグ」

「そろそろフィールドワークも行きたいね~」


D「うん!行きたい!」


   A「そうだな。来週はいつものとこだからフィールドワークはなしだし。4月くらいにどっか行こうか。行きたいとこ探しといて」


E「ありがと~。じゃあ寝ます。お休み~◇◇◇彡」


D「早いな!お休み~◇◇◇彡」


   A「おつかれさん」


≪Eが退出しました≫


⦅レコーディングを終了しました。⦆


D「Aこのあとどうする?」


   A「うーん、どうしよ。ちょっとだけ飲みに行く?遅いけど」


D「そうだなー。うーん、どうしよう」


   A「うち来てもいいよ?」


D「そうだね。じゃあそうするー。なんか買ってくね!」


   A「ありがとう。適当によろしく!」


D「了解~」


≪Dが退室しました≫


≪Aが退室しました≫



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※1~11の文献については、国際日本文化研究センター「怪異・妖怪伝承データベース」<https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/> から引用させていただきました。

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