ブックカフェ

第1話

スーツケースを一つ抱えて、電車を降りた。


ガラガラ大きな音を立てながら歩を進める。


迷惑になりそうなその音も、夕刻の喧騒にまぎれて、それほど気にならない。


駅を出て、バスやタクシーが何台か停車しているロータリーの先に見える商店街を眺める。



本当はこの町に帰ってきたくはなかった。

高校卒業までずっと過ごしたこの町に。


父親の転勤と共に、大学はその転勤先を受験して、四年間はそこで過ごした。


就職も親元で探したけれど、希望する職場はなかなか見つからず、やっと見つけ出した求人案内に迷いながらも応募して無事採用された。


小さい頃からのわたしの居場所は、図書館か本屋さん。


とにかく本に囲まれた仕事がしたかったけど、希望する図書館司書は募集自体が少ない。


これを逃すと次がないかもしれないと思って、覚悟を決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る