第17話 焼肉会議
<カナタ視点>
「さて、話すべき事が出てきたな」
エルヴィと合流して、翌日。
俺は話し合いの場を
──じゅ~。
「……で、では、昨日の配信について」
昨日の配信では色々と起きた。
エルヴィや魔人、その他のことも。
一度整理する必要があるだろう。
──じゅ~。
「…………」
だけど、もう我慢できなかった。
俺は期待する従魔たちの視線を感じながら、前に手を出した。
「まあ、まずは食べてからにするか」
「「「わーい!」」」
俺が
そう、俺たちは焼肉に来ていた。
じゅーじゅー鳴っていたのは、肉を焼く音だ。
「「「おいしー!」」」
「はは、皆が喜んでくれて俺も嬉し──」
「「「おかわり!」」」
「早ぁっ!?」
肉は一瞬で
よっぽど楽しみにしていたらしい。
俺はしょうがないなあと、注文用のタブレットを手に取る。
「また注文すればいいけどな」
「ですが主様、本当にたくさん食べていいのですか?」
「おう! なんてたってここは──」
心配するココネに、俺はキメ顔を見せる。
「“食べ放題”だからな」
「た、食べ放題!?」
「ああ。なんと、どれだけ食べても値段が変わらない」
「はわわ、そんな夢のようなお場所が……!」
パアアっと顔を晴らしたココネは、早速追加の注文をしまくる。
この顔を見られたら、俺も連れて来た
え、高級店じゃないのかって?
バカ、ただでさえ
個別メニューの店にいけば、余裕で破産するわ。
昨日頂いたスパチャの額ですら、一瞬で消え失せる自信がある。
「ココネ、満腹になるまで食べますっ!」
「おーそっかそっか。今日は思う存分食べな」
「はいっ! えへへ」
ニコニコなココネに
また隣では、何やら大人ぶっている二人もいた。
ルーゼリアとエルヴィだ。
「お姉さんだし安い肉で我慢してあげるわ……はむっ、はむっ」
「舌が
「その割にはめっちゃ食ってんじゃねえか」
二人もココネに負けない勢いでがっついている。
どうやら満足してくれたみたいだ。
「じゃ、俺もそろそろ少し頂こう──」
「「「おかわり」」」
「俺の分残せよ!?」
こうして、俺たちは焼肉会を始めた。
これも
「え、王国は
会も進み、懐かしき異世界の話に入った頃。
俺が聞き返すと、エルヴィは衝撃的なことを言った。
「うん。わたしが革命起こして滅ぼしたの」
「そんな簡単に……」
「だって、カナタ様も貴族には未練ないでしょ?」
「……まあな」
異世界では、勇者だからと貴族連中には働かされっぱなしだった。
今思えば、現代日本でもびっくりのブラック具合だ。
あっちには労働基準法なんてないし。
「だからぁ、ちょちょいっと民衆に手を貸してね」
「エグい事するなあ……」
だけど、俺は民衆からは支持されていた。
王国上層部の闇を知らない彼らは、俺を勇者として
宿を貸してくれたり、ご飯をくれたり。
結果、俺が上層部と民衆で板挟みになっていたことは事実だ。
でも、民衆のおかげで頑張れたのは間違いない。
民衆を考えて、俺は従魔たちの怒りを抑えていたわけだし。
だけど、俺が処刑されて、従魔たちの怒りは爆発。
処刑の直前に別れたはずが、従魔たちは再び王国に姿を現し、召喚士を〇したり革命を起こしたりと、盛大に報復したらしい。
「はは、やっぱ怒らせたら怖いな……」
「「「なにか?」」」
「いいえ。なんでもございません」
俺は目を逸らすように、顔を伏せる。
すると、珍しくルーゼリアとエルヴィがハイタッチしていた。
ルーゼリアが「やるじゃない」とか言って。
ココネは再びお肉に夢中だ。
そんな中で、昨日の配信の話に移る。
「けど、異世界から魔人まで来たんだよな」
昨日の男は、他の魔人は知らないと言っていた。
それでも
異世界と同様に行動されれば、現代は
「んー、お姉さんが殺せばよくない?」
「わたしも殺しに参加しまーす」
「それは、そうなんだけどさ……」
ダメだ。
こいつらは物事を深く考えることを知らない。
ならばと、俺はふと疑問を口に出す。
「そもそも、魔人はダンジョンから出てこれるのか?」
「あ、お姉さんも思った」
「ていうか、それを言えば君たちだって……」
現代では、魔物はダンジョンから出られないらしい。
何かに
理由は分からないけど、それが常識だそうだ。
でも、同じ異世界出身の従魔は、普通に地上で生活している。
おかげで部屋は狭いが、改めて考えると不思議だ。
「地上に出た時、動きにくいとか無かったのか?」
俺が首を傾げたのに対し、三人はドヤっとポーズを取った。
「ココネは強いからありません」
「お姉さんも余裕だったわねっ」
「わたしって特別じゃん?」
「うん。聞く相手を間違えたね」
全く疑問は解消されなかったが、もうそういうことにしておこう。
案外“強いから”ってのも正解かもしれないし。
異世界と大気の状態が違っても、こいつらなら普通に生きていそうだ。
すると、ドヤ顔で筋肉のない腕を見せびらかしていたココネは、そういえばとたずねてくる。
「主様、配信者には事務所なんてものがあるそうで」
「あ、あー……」
「主様ほどのお器なら、大手からも勧誘がくるのでは?」
「そうかなあ。いや全然だよ、ははは……」
嘘です。
本当はアホほど勧誘きてます。
バズった次の日には、超大手から業界の
だけど──。
「事務所って
「違うわよルーゼ。
「主様の手下がたくさん増えそうですね」
「…………」
こんな奴らと入れるわけがない。
俺はもう慣れたけど、従魔に絡まれる他人がお気の毒すぎる。
ということで、俺は全てお断りさせていただいていた。
「でもなー」
現在の事務所は、探索ギルドを
両方の性質を持つことで、探索協会などから直接依頼や支援を頂けるそう。
ある程度の地名度になると、どこかしらへの所属を
また、“所属して損”ということはまず無いみたいだ。
熱望されてるグッズ展開とかも進められそうだし、良いこと尽くめではある。
それでも……。
「主様。どの事務所を手下にします?」
「よし、一旦その思考を捨てようか」
うん、やっぱ無理そうだ。
従魔たちもちゃっかり俺を魔王として受け入れてるし。
なに覇道を歩ませようとしてるんだ。
だったら事務所のことは今度考えよ。
それより今は、先にやることがある。
「じゃあ次の目的はあれだな」
俺が現在持っている資格は、『一般探索者資格』。
これではC級ダンジョンまでしか潜ることができない。
だけど、これから魔人出現の可能性も考えると、B級以上にも潜れるようにするべきだ。
「上級探索者資格のために、試験を受けに行こう」
こうして、俺たちは焼肉会議で色々と話し合った。
ここまでの整理と、次の目的を決められた良い会だっただろう。
ちなみに、従魔たちが肉を食べ過ぎて普通に出禁をくらった。
★
<三人称視点>
数日後、探索者協会。
「た、大変です! 今月末の上級試験にとんでもない奴が申請してきました!」
「ま、まさか……!」
その文言で、すでに協会の者たちは察する。
担当官から発せられた人物とは──。
「久遠カナタと、その従魔たちです!」
「……っ!」
その名に、地位がありそうなおじさんは
そのまま深く息を吸い、遠い目を浮かべた。
「これは、荒れるぞ……」
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