【おまけ】ある日の基央さん。
第16話
藤「それで?こっちとこっちが合わないことに対する説明には、なっていないでしょう」
――だから、それは!
藤「ふうん。律儀だね…」
窓を閉め切り、ひたいに汗を浮かべて、それでも絶やさない笑み。
夕暮れの部屋に藤原組長の右手がゆっくりと上がります。
――ガチッ
撃鉄の上がる音。
藤「どうした。何も言わずに終わりか?おまえが消えても、俺は別のやつに吐かせるだけだ」
――ひいっ!や、やめてくれ…!俺は、ただ命令されただけなんだ!
藤「そんなはずねぇよなぁ。あんたは、今いる組の、若頭だ。そうだろ?」
――う、うぁっ…
藤「死にたくなきゃ言いな。なぁに心配することはねぇ、ムショで5年もつとめりゃ終わりだ」
――し、しかし…それまでに、組は!
藤「あぁ?俺がだいーじに、見ておいてやるよ。大丈夫だ、つぶしゃしねぇ…」
ゆっくりと近づく足音。恐ろしいほどの熱気とともに、氷の瞳が相手を動けなくさせます。
――言う!言うから許してくれ!別の帳簿があるんだ、組の本部に!
藤「……」
――金庫がある。隠し部屋なんだ、組長のいるところの!
藤「そこになかったら、あんたが責任とってくれんのか」
――そんな…
藤「一緒に来い。そうすりゃあいつらも、下手な真似はできないだろう」
男を引っ立てるように立ち上がらせ、出ていく姿。
最終的には殺さずとも、押し引きのツボを心得た拳銃の使い方。
黒い細身のスーツに、薄いラベンダー色のチーフが映えます。
『よその組の人と会うなら、ちゃんとした恰好じゃないとね』と言ってくれたチャマさんの顔を思い出し、拳銃を胸元へ戻しました。
――あんた…すげぇな、まだ若いのに。さすがに先代の秘蔵っ子だっただけのことはある。
藤「うるせぇよ」
――うげっ…!!
後ろに回した手を軽くねじり、外に押し出します。
どんどん暮れていく夏の日。
今日の夕食にありつくまでには、まだもう少しかかりそうです。
※ちょっと書いてみたかったもので。。正統派(?)ヤーさん、藤原組長でした。
この御方なら姐さんの口に銃先つっこんでヤることもありえそうだ。
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