第13話

升「…あ…」

増「ごめん…明るくて恥ずかしいか」

升「え、ううん…そうじゃなくて」



不器用に頬へのキスを繰り返し、肌に触れてみました。

服の隙間から、脇とか、お腹とかに指をあててみると、ヒロ兄が顔を真っ赤にして秀夫くんの首元に顔を当ててきます。


あつい。夏だから?

でも、抱きしめた時よりさらに熱くなっているような気がする…



増「おれ、初めてなんだよ。すごくドキドキするね」

升「ヒロ兄…、え?初めて?え?」

増「えっ?もしかして、経験あるの?」

升「ち、違うよ。俺じゃなくて、ヒロ兄が…」

増「俺は初めてだよ、もちろん」

升「…基央兄さんとは…」

増「は?なんでそこで兄さんが出てくるの」

升「………」



あの朝のことを思い出します。

落ち着いた様子ながら、意地悪そうな笑みとともに浮かべていた、どことなく不思議な表情…

やっぱりからかわれていたのか!

そしてきっと、俺がヒロ兄を慕っていることも気づいていたに違いない。俺自身がよく分かってなかったっていうのに。



升「あんのオッサン…!!」

増「え?なに、どうしたの?」

升「…何でもない。俺が、どんだけヒロ兄のことしか考えてなかったか、ってことだ」

増「??」



上気したままで、俺を見上げてくる顔。白い手首。

不意に強い衝動がわき上がります。

自分のものにしたい。俺だけ見ててほしい。俺がずっと守るから、全部俺にあずけてくれないか。



増「わっ、あ、ぁ…ひで、お…」

升「…好き」

増「あぁ…うん」



そっと、吐息とともに。



増「俺も大好き」






窓を閉め、冷房を入れると、部屋には海から差し込んでくる陽光だけが溢れかえりました。

つたなくても初めてでも、お互いが本当に好きなら、大切に抱き合うことができる。そう思えるような営みでした。



増「あ、ぁ…秀夫…そう、もっと…ゆっくり…」

升「…、ヒロ…俺…もう、あっ…いく…っ!!」

増「っ!!」



すぐに出てしまったそれが、ヒロの顔や眼鏡を白く染めます。

それでも、秀夫くんがどうしようと思う間もなく、艶やかに笑ってくれました。



升「…ごめん」

増「全然いいよ。秀夫、気持ちよかった?」

升「すっごく。でも…まだ、したい」

増「あぁ…ほんとバカだね。そんなに、俺としたい?」

升「うん」

増「じゃあ、俺の言う通りにしてみて。まず…そう、優しくさわって…ぁ…」

升「こう…?」

増「あ…ぁ、ん…はぁっ…」

升「ヒロ…すごく、エロい。なんでそんなに…」

増「は、ぁあ…ゃ、ひ、ひで…あぁ…」

升「こう?ヒロ、もっと教えて。どう…?これは?こっちは?」

増「あ!あぁ、や、そこ…だめぇ、あぁ…」



少しだけ大人ぶってリードしようとしていたヒロが、ガードをゆるめていく姿。

布団の上で乱れたその体が、耐えきれないと言うように、畳の上でくねります。



増「だ、だめ…もっと、ゆっくり…あぁ…」

升「…うれしい、ヒロ。もっと…俺…」

増「…秀夫。も、我慢できない」



ふっと秀夫くんの体にのしかかってきたのは、軽くてきれいな、羽のない天使。



升「あっ、あ…ヒロ、あ、そ、そんなこと…っ」

増「…ひでお…秀夫、好き…。どう?気持ちいい…?」

升「あぁ、う、あっ、や、ヒロ兄、ヒロ…」

増「秀夫お願い。俺に…挿れて?」

升「……っ」

増「ほしくてしょうがない。秀夫。俺と一緒に、大人になろ…?」



もう自分でもおさえきれないのでしょう。

これから経験する彼の中を想像して、秀夫くんは目を瞑りました。



増「ああぁっ…」

升「はぁ…っ、ヒロ…すげぇ…!」

増「…ぁ、あぁん…秀夫ぉ…」

升「ごめ…ヒロ、泣かないで…?ごめん…」

増「ちが…そうじゃない、つらいんじゃない。逆」

升「え?」

増「俺、こんなに幸せなの、生まれて初めてだなって…思ったら、涙が…」

升「…うん。俺も…」



少しずつ、ゆっくりと。丁寧にその体を貪りました。

いっそひとつの体になれたらいいのに。骨まで一緒になって、流す涙も共にしたい。でも。



升「ヒロ…ヒロ……っっ!!!」

増「あ、あぁ…だめ、いくぅ…!!」



こうして一緒に果てを見られるなら―――



増「ひで…お…」

升「うん」



こうして、唇を重ねることが出来るのなら。

2人でいる時間は、きっとかけがえのないものになる。


昼と夜の境目は、恋を紡ぐのに最も適した時です。

空がオレンジ色になり、星や月が現れるようになるまで、2人が部屋を出ることはありませんでした。

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