第23話
その時、リビングからゲーム機の発する警告音が聞こえてきた。
長時間放置していたからだろう。ヒロが黙って止めに向かう。
俺たちもそれに引きずられるように、移動した。
静まりかえった部屋に流れる電子音がやんだところで、チャマがふと遠くを見るような目になった。
ここ最近…藤原が再び現れて以降、時々見るようになった表情。
斜め上の天井を、見ているのかいないのか。
升「チャマ」
直『…ん?』
升「おまえ、どうして葬式に出なかった。どうしてちゃんと泣かなかった。どうしてちゃんと身も世もなく悲しんで、嘆いて、最初にぶっ壊れておかなかった!中途半端にしとくから、だからこんな幽霊が出て来ちまうんじゃねぇか!!」
ぶっ飛ばされる心づもりで言ったそれは、俺の本心だった。
ひどいことを言っている。本当はこんなこと言いたくない。
でも、言わなければチャマは苦しみ続けるんだ。
藤原の亡霊と一緒に、きっと永遠に。
直『…だって。だって、そんなの嫌じゃん。藤くんが…死んだなんて。そんなの絶対に嫌じゃん』
増「……」
直『もうどこ探しても藤くんが、いないって。電話はつながらないしメールも戻ってくるし、スタジオにも事務所にも会社にもどこにもいないし、マンションだって解約されて、臼井行ってもユーカリ行っても、実家にもどこにもいなくて、あいつが気に入ってた店とか夜の道とか河原とか公園とか、どこにも何もなくて!』
増「チャマ…」
直『そんなの嫌じゃん!どうしていなくなっちゃったの?あんな元気だったのに、死んだりするはずねーじゃん!葬式なんて…通夜なんて…、そんなふうにおまえらが無理矢理ケリ付けようとするから、バカみてぇに泣いたりするから!あいつ優しいから、みんなに合わせようとしてくれてるだけだよ!きっとどこかで隠れて、俺たちのこと見て笑ってるよ!現にこうやって、出てきっ…』
増「チャマ!!」
ヒロが、チャマを抱きしめる。
増「チャマ、チャマごめん!もういいから、それ以上言わなくていいから!!」
直『…藤くん、ふじくん…!!』
藤原が、ふわりと揺れた。
迷うように言葉を探す、優しくて切なげな雰囲気だった。
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