side増

第19話

夜更けの街を車で走り、秀ちゃんの家へ戻った。




あいつに生きていてほしいと願ったのは、誰よりも、俺たち3人。

そして秀ちゃんの言ったことがもし正しいとしたら…迷うことなく眠らせてやることが出来るのも、俺たち3人?


だとしたらそのXデーも、俺たちの手で決めることが出来る?



増「集団ヒステリーって、言われたよね。あの時」

升「あぁ」



つまり、藤原の死を受け入れきれない俺たちだけが、小さなコミュニティに閉じこもって幻を見ている可能性。

他の人には見えない理由も、それで説明がつく。


このままじゃいけない、きちんと死なせてやるべきだって、それは確かにその通りかもしれないけど…








そのまま言葉少なに眠りにつき、次の日、携帯が鳴る音で目が覚めた。


~~♪♪


増「ふぁ…あぁ、何だ、もう10時過ぎてる…」

直『もしもし、ヒロ?』

増「うん。どしたの」

直『今って秀ちゃんち?』

増「うん」

直『ならちょうど良かった。そっち行ってもいいかな』



会話が聞こえたんだろう、秀ちゃんがうなずく。



直『今俺んちなんだけど、藤くんとゲームの話になってさぁ。みんなでやりたいねって。ねぇ、そっち行っちゃダメ?』

増「…わかった。待ってる」



Xデーはいつだろう。頭でわかってても、やっぱり来てほしくない。


あいつは3人以外には見えない。

俺たちの頭がおかしいというなら、それで構わない。そんなことより藤原を失いたくない。


そりゃあ出来れば生きててほしかったけど、でもせめて今のままでもいいから、周りからどう思われてもいいから、だから。



升「来るって?」

増「うん。ゲームやろうってさ」



絶対にいやだよ。俺たちの手で、あいつをもう一度消さなきゃならないなんて。



升「藤原も?」

増「うん」



この家のテレビボードには、しばらく使ってないゲーム機が押し込んである。

新しいハードを買った藤原が、1年ぐらい前に「寄付する」とか言って、ここに置いてったやつ。



増「出しとかなきゃ…」

升「………」



そういえば、ドラクエに“さまようたましい”って名前のモンスター、いたな。

影っぽい素早い動きで何もかもフワフワかわしまくる、幻みたいなやつ。

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