side升
第7話
――どうするんですか、今後。
――うーん。2人があの状態じゃなぁ…
――集団ヒステリーみたいなもんか?あれ。
――でも万が一、本当に見えてたらどうするんです?
――いや、だから“本当に見えてる”んだろ?本人たちにしてみれば。
――あ…
――酷い言い方をするようだけど、幻覚だよ。立派な病気だ。医者に診せた方がいい。
――そっか…。あと、直井さんも…
――あー。あっちはあっちで、なぁ…
――あの4人、本当に仲が良かったですもんね…
誰にも見えないのを良いことに、藤原がスタッフの会話を盗み聞きしてきた。
藤「しっかし、何てこと言うんだ。俺はここにいるのに」
ブツブツぼやく半透明の友人を庇いたいのは山々だが、残念ながらこの世は多数決だ。
というか、俺たちの頭がおかしいと思われ続けるのはどう考えてもまずい。
升「この後どうする?」
増「今日は…事務所行かなくていいのかな?でも帰るったって、まだ…」
その時、ノックの音が響いて、反射的に藤原を俺とヒロの背後に隠した。
升「はい」
―――桜井です。升くんと増川くん、ここにいる?
増「あっ…はい、います!」
ヒロが慌てて開けたドアの向こうには、桜井さんが立っていた。
俺たちを認め、応援し続けてくれる大切な先輩。葬儀中も見た、真っ黒な喪服姿。
ぽつぽつと言葉を交わすが、やはりその目には俺たち2人しか映っていないようだ。
桜「この後、時間ある?」
増「え?…はい」
桜「良かったら、うちにおいで。さっきのアレについても少し聞きたいし」
さっきのアレ。この状態の藤原を初めて見て、大騒ぎした俺たちのことを。
升「…わかりました」
こんな状況で初めてお邪魔することになるなんて思わなかったけど。
藤原も、一緒についてきた。
家に着いた後、一通りの説明をした。どこまで信じてもらえるか不明だったが、なるべく俺たちの見たままを話した。
桜「うーん…」
升「以上、です」
桜「…本当にいるの?」
升「はい」
桜「今もそこに?」
増「はい」
桜「…俺にはわからない。でも信じたい気持ちもある。“藤原基央”を特別視したい気持ち、っていうのかな…」
………。
桜「とにかく、病院送りにされたくなかったら、もう2度とそのことは言わない方がいいよ」
藤原が、さみしそうに目を伏せた。
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