第20話
チャマの家に着いた。
インターホンを押そうか迷っていると、藤原が何かに気付いたようにドアノブに手をかけた。
升「…?開いてるのか?」
藤「ああ」
不自然さを感じたのは、2人とも同じ。
玄関に足を踏み入れた瞬間、その様子はいやでも耳に飛び込んできた。
直『やぁん、…あ、ぅんっ…』
何だ?何がどうなってる?
チャマ、おまえ一体、何をしてるんだ?
直『あぁん!…っは、ぁ…』
足元に転がる見慣れない靴に、絶望が加速する。
俺も藤原もここにいるのに。相手は誰だ?
おまえ、そんなに色んな相手がいるのかよ…?
短い廊下から室内へ通じる扉を、そっと開けた。
途端に濃くなる情欲の香り。
快楽に溺れるチャマの姿とともに、もう1人の正体がはっきりと分かった。
藤「ヒロ…」
殴りかかってもおかしくない事態だが、藤原は凍りついたように動かない。
どうしてだろうと思っても、俺自身も同じように動かないことを考えれば、それはもう「なるようになれ」ということなのか。
と、その時。ヒロが目の端で、俺たちをとらえたように見えた。
…あいつはもしかしたら、俺たちがここにやって来ることまで全て想定していたのかもしれない。
それを裏付けるかのように、ほんの少し口角を上げただけで、その動きが止まる様子はなかった。
直『あぁ…、ぁあぁ…!』
増「…っ、チャマ、チャマッ…」
升「…くそっ…」
こんな状況で好きな相手を見続けるなんて、拷問だと思う。
俺がもっとしっかりあいつを繋ぎとめていれば、こんなことにはならなかったんだろうか。
隣で壁に寄りかかる藤原も、同じように恐れ悔やんでいるだろうか。
チャマが俺たちに気付く様子はない。それでいいと思う。
彼を狼狽えさせたくない。傷つく様子は見たくない。
裏切られているのはこっちなのに、なおもそんな気持ちを抱く自分に笑いがこみ上げてきた。
もういいよ。そのまま最後までやっちまえ。
―――男性というのは、どんな邪魔が入ろうとも、行為の完遂を何よりも優先させたがる生き物だから。
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