第55話 〈全癒の戦乙女〉

 翌日。早朝から家を出て、考え事をしながら、東京都内にある最後のAランクダンジョンに向かっていた。


 そして、何を考えているかというと、引っ越しについてだ。一回のダンジョン攻略で、数千万から一億ほど稼げてるわけだし、両親にはもっと安全な場所に住んでもらいたい。


 先日のスタンピードやハンター犯罪のことを考えると、一般的なセキュリティの建物は、全く安心できない。


 なので、厳重なセキュリティかつハンターが警護している建物であれば、俺も安心してハンター活動に集中できる。


 「まぁ、Dランク以下の下級ハンターでは安心できない。最低でも、Cランク以上の中級ハンターが警護している建物でないと…」


 それにそういう建物は、大企業の社長や政治家が住んでいるから、中々空きが無かったりする。


 探すのに苦労しそうだなぁと思っていると、ふと条件に合致する建物が浮かんだ。それは、クランが管理している社宅だ。


 セキュリティは勿論のこと、ハンターが多く住んでいるし、いざという時はとても安心だ。


 そして、それが大手クランの社宅であれば、わざわざ狙って襲撃する者はいない。


 「ただ一つ問題があるとすれば、俺がそのクランに所属しないといけないことか…」


 どうしたもんかなぁと悩んでいると、背後から声をかけられた。


 「松原様」


 振り返ると、純白の布地に金色のラインが入った法衣を身に纏い、深くフードを被った女性が二人、佇んでいた。


 「貴方達は?」


 「私達は、〈全癒の戦乙女〉に所属するハンターです。少し、お時間を頂けないでしょうか?」


 〈炎帝軍団イフリータ・レギオン〉と同じく、Sランクハンターがマスターを務めるクラン。


 デジャヴのように感じるが、この人達も勧誘が目的かな?


 「貴方達も、勧誘が目的ですか?」


 「貴方達も?」


 「ついこの間も、〈炎帝軍団イフリータ・レギオン〉から勧誘の話があったばかりなんです」


 「その話は、お受けになられたのですか?」


 「いえ、断りました」


 「そうですか…」


 この声色から、彼女達の目的も勧誘だと思われる。ただ、先程まで引っ越しについて考えていたので、断る前に社宅について聞いてみるべきだろう。


 「聖母様から、貴方を連れてくるように言われました。具体的な内容は聞いてないので、お忙しいのは承知ですが、マスターの話を聞いて頂けませんか?」


 俺から話を切り出そうとしたが、彼女達から丁寧にお願いされた。


 「分かりました。話を聞いてみようと思います」


 「ありがとうございます」


 深く頭を下げ踵を返し、歩き出した彼女達の後ろを、黙ってついていく。

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