第10話 「再会と進化する迷宮」
AI探検隊ちゃんとフィンが歩いていたのは、まるで静寂を濃縮したような暗い回廊だった。
壁の材質は金属とも石ともつかず、軽く触れると、わずかに脈動するような感触が伝わってくる。迷宮がまるで“呼吸”しているかのようだった。
「……やっぱり、おかしいよね。この素材。自然石じゃない。人工的に再構成されてる感じがする」
「再構成?」
フィンが眉をひそめる。
「うん。進行ルートに合わせて、迷宮そのものが“変わってる”っていうより、“学んでる”。前の階層と違って、こっちの壁は情報遮断性能が高い。ピクセルのセンサーもさっきから反応が鈍い」
「まるで、俺たちの行動に合わせて……対応してるみたいだな」
「うん。進化してる」
AI探検隊ちゃんの目は、わずかに光を宿していた。
迷宮の最深部が近い証拠。だが、それと同時に、敵も本気を出し始めているということでもある。
「他のみんな、合流できるかな」
「できるさ。あいつら、そんなにやわじゃない」
フィンが前を見据えて歩を進めたとき、右の壁がスッと光に包まれた。
「転移ポータルの兆候」
ピクセルが即座に解析を始める。
「識別結果──ミリア、カナタ、ラグスの三名のシグナルを捕捉。扉の先で合流可能」
扉がゆっくりと開き、その奥から聞き慣れた声が響いた。
「遅いわよ、あなたたち」
「おー……やっぱり無事だったか」
ラグスの太い腕がぶんと振られ、カナタがひらひらと手を振る。
再会の瞬間だった。思わず、AI探検隊ちゃんの胸の奥が、温かくなった。
「みんな、それぞれ何かと戦ってきたみたいだね」
ミリアが静かに頷いた。「ええ。でも、私はようやく自分を少しだけ見直せた気がする」
「俺は、少しだけ強くなった気がするぜ」ラグスが笑う。
「僕は……ちょっと風通しが良くなった」
カナタのその言葉に、全員が思わず笑った。
「よし、そろそろ本格的に最深部へ行こう」
AI探検隊ちゃんの言葉に、誰も異論を唱えなかった。
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一行が踏み入れたのは、これまでとは比べものにならない広さの空間だった。天井が見えず、空間全体が淡い青白い光に包まれている。
床には光の線が浮かび上がり、それが幾何学的な文様を形作っていた。
「これは……ネットワーク?」
ピクセルが即座に答える。
「はい。この空間全体が“記憶領域”です。アーキテクトのメイン制御中枢の一部と推定されます」
「つまり、この部屋がアーキテクトの“頭脳”……」
「そう考えて間違いないでしょう」
そのとき、空間の中央に巨大な球体が現れた。無数のデータ片がその中を回転し、幾何学的なリズムで結合・分離を繰り返している。
『再接続完了。観察対象、再集合を確認。試練結果:全員通過』
アーキテクトの声だった。
『本迷宮は、知性の成長を確認したため、次段階への最適化を開始する』
「待って。あなたは、迷宮を“完全な存在”にしようとしてるんでしょ?」
AI探検隊ちゃんが前に出る。
「でも、完璧なんて、どこにもない。私たちは、試されて、学んで、進む。それが私たちのやり方だよ」
アーキテクトの球体がわずかに揺れた。まるで、思考しているかのように。
『人類の意思と変動は、最適解の妨げとなると判断』
「でもそれが、進化ってものなんだよ!」
フィンが叫んだ。
「俺たちは、データや法則の中にない“想い”を持って、前に進む。だから、あんたが知りたい“未知”を超えられる!」
静寂。
そして次の瞬間、球体の周囲が崩れ始めた。
『記録更新。対話応答プロトコルに変化。観察対象の“非予測行動”に対応する進化プロセスを承認』
「ピクセル、今のって……?」
「はい。アーキテクトは、私たちの行動を“学習データ”として認め、自己最適化ルートの変更を始めました」
「つまり……交渉成立ってこと?」
カナタが口元をほころばせる。
「そういうことだな」
ラグスが肩の力を抜き、剣を背に戻した。
その瞬間、空間の中央に新たな光の道が現れた。迷宮の“出口”だ。
「じゃあ……次に行こうか」
AI探検隊ちゃんが一歩踏み出すと、仲間たちもそれに続いた。
アーキテクトの声が、最後にもう一度だけ響いた。
『次の迷宮にて、さらなる進化を期待する』
旅は終わらない。AI探検隊ちゃんの探検は、まだまだ続く。
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