第52話 未確認ダンジョンへ

 あれから俺達は解散し、後日俺が指定された場所に出向くことになった。


 久しぶりにLIONを使うはめになったな。


 土曜日ということで今日は学校が休み。思う存分ダンジョンに潜ることが出来る。



 今回俺が呼び出された場所は空港だ。


 電車を乗り継いで空港まで行くことになったのだが、今回はみなみもいないしどうやって駅に行けばいいのか分からない所だった。


 最悪走ってなんとなくで行くか? と前日に思っていたちょうどその時、リリからLIONのメッセージが送られてきた。


『頭よわよわ滅也おにーさん向けガイドマップ』


 そう書かれたファイルが送られてきて、その中に最寄駅への行き方やそこから空港へ辿り着くための道なんかが記載されていた。


 小馬鹿にした文字が書き連ねられていたが、このファイルは渡りに船といった所だろう。


 それを頼りに空港に無事到着することが出来た。


 裏口から入りそこら辺にいるスタッフにリリの名前をだすと、すぐさまそいつは上の者を呼びに行き、偉い立場であろう人物が俺を滑走路へと連れて行った。



 その滑走路にポツンとリリが立っていた。



 ぐるぐるキャンディーを舐めながらスマホをいじっている。


 リリがふと俺に気づくと、スマホを閉じて手を振って俺を迎えた。


「滅也おにーさんおはよー」

「おう」

「今日は制服じゃないんだ〜。馬子にも衣装って感じ?」

「ダンジョンに潜る時はいつもこれってだけだ」

「へぇ。思ったよりダサくなくて意外〜」


 そんなことよりも気になるものが俺の目に映っている。


 俺の体よりも大きい機械。


 機体は細長く、左右に羽が生えている。


 飛行機よりは小型だが明らかにそれに準ずるもの。


「これはなんだ?」

「リリ専用のジェット機だよ。これで南端までひとっ飛びだね」

「お前そんなものまで持ってるのか」

「金ならいくらでもあるからね。あ、でもでも桐島才人を倒した滅也おにーさんには敵わないかも?」

「いくら持ってるかなんて俺も良くわからねぇな」

「おんなじだぁ。リリも分かんないもん」


 世間話もそこまでとして、早速俺達は未確認ダンジョンへ向けて出発することにした。


 ジェット機から降ろされている階段を登り、そのまま用意されている席に着く。


「じゃ、運転よろしく」

「御意」


 既に運転席には女性のパイロットが座っている。


 俺を一瞥すると軽く会釈をして、また前に向き直した。


「しゅっぱーつ」



 ――ゴオオオ



 リリの掛け声と共にジェット機は出発。


 みるみる機体が上昇し、しばらくして安定した軌道に乗った。


「便利なもんだな」

「1時間もかからずに着くから移動はらくちーん」


 高度が高いからあまり景色の動きは感じないものの確実に進んでいることは分かる。


 リリは景色を見ながら楽しそうに俺に話を振る。


「あはは、それにしても良く空港まで来れたねぇ?」

「ああ。あのファイルは助かったぞ」

「頭よわよわの滅也おにーさんはどうせ迷子になっちゃうでしょ?」

「最悪走って行けばいつか着いたな」

「うわ〜頭わる〜。脳筋すぎ〜」

「脳筋は余計だ」


 それから少し話しつつも、言った通りあっという間に最南端の空港に到着。



 ジェット機から降り、空港から出た後は、近くの港へと向かう。



 そこに止められていたリリ専用らしいクルーザーに乗り込み、目的地へと向かった。







「とうちゃーく!」


 着いた先は幻想的な空間。


 バックにある森とエメラルドグリーンの海が南国のような雰囲気を醸し出す。



 まるでリゾート地、というかリゾート地そのものか。


 砂浜と海の境目があやふやで、どこまでも続く地平線がなんとも世界の果てを感じさせる。


 ただ今回は観光目当てで来たわけではない。こんなものはどうでもいいんだ。


「こっちこっち〜」


 リリに先導されながら未確認ダンジョンへと急ぐ。


 俺達は緑が生い茂る森の中を進んでいく。


 ルンルンのリリの背中を追いながら歩いていくと、ある大きな空間に出る。



 ――そこには巨大な岩がそびえ立っていた。



「よっと」


 リリはその岩に近づくと、両手で軽く持ち上げ、どっかに放り投げる。


 流石はS級探索者ってところか。


 その岩があった所は空洞となっており、見通せない程に穴が深い。


 感じだことのある独特の雰囲気。


 そうか……ここが未確認ダンジョンか。


「こんな所も見つけられないなんて、日本の探索者の頭スポンジすぎ。それとも筋肉がスポンジなのかなぁ?」

「他のダンジョンとは雰囲気が違う気がするな」

「リリの言った通りでしょ? きっと凄いよ」


 何かしらのただならぬオーラを感じる。


 期待させてくれるな。


 リリはドローンを取り出すが、少し逡巡した後にそれを懐に戻す。


「ま、配信はとりあえずやめておこうっと」

「なんでだ?」

「んふふ、滅也おにーさんといるとリリに目がないおじさん達がヤキモチ妬いちゃうからぁ」

「なんだそりゃ」


 まあなんだっていい。

 

 お楽しみの時間だな。


 臆することなく俺達は、未確認ダンジョンへ足を踏み入れた。

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