第47話 勧誘
「で、他に強い魔物が出るダンジョンはないのか?」
「また!?」
学校帰り。
たまたま遊びに来ていたみなみと俺は一緒に歩いていた。
桃葉は女友達とカフェに行くとかで隣にはいない。
「夕刻ダンジョンは消えちまったじゃねぇか」
「うーん、もう少し保つと思ってたんだけど。ダンジョンは気まぐれさんだね」
「あはは」とおどけたようにみなみは笑う。
ケルベロスを倒した翌日、夕刻ダンジョンが消滅したというニュースが流れてきた。
そのおかげで俺はまたダンジョンを探さなければいけないハメになっている。
「それこそ前に言った富士山にあるダンジョンとかはどう? 富士山も綺麗だしっ!」
「強い魔物が出るのに時間がかかるんだろ? それに富士山も遠いしな」
「そうなんだけどね……」
ここから富士山まで片道数時間はかかる。日々の学校もある中で行っている暇なんてとてもない。
学校をサボればいけるがな。ただそれは最後の手段だ。
みなみは顎に手を当てて悩みながらも案を出す。
「うーん探索者ギルドに行ってみるといいかも。ギルドに置かれている専用のパソコンからライブラリにアクセスすればある程度の情報は手に入るよ? ただS級魔物の情報があるかは分からないけど……」
「パソコンの使い方が分からん」
「そ、そっか……なら私も一緒に行くよ! それなら調べられるはずっ!」
「お、ありがとな。それなら大丈夫だ」
パソコンなんて俺が使えるわけがないからな。
頼んだぞみなみ。
「というかいっそのこと彩華さんに聞いてみたらいいんじゃない? ギルド職員ならそういう情報知ってるかもしれないよ」
「そういえばそうだな、忘れてた」
この前の魔道具の件と言い結構そこら辺に詳しそうだったからなあや姉は。
聞いてみるのはアリだな。
「じゃあ結局探索者ギルドに向かえばいいか」
「うん」
俺達は元々ギルドへ向かおうとしていたから好都合だ。
方針も決まり、差し掛かった行き止まりを右に曲がろうとしたその時――
「すみません。少しお時間いただけないでしょうか?」
後ろから聞こえた声を耳にして振り返る。
そこには黒いスーツを着た別段特徴のない男が立っていた。
「天城滅也様と水沢みなみ様、でございますね?」
「あ? 誰だ?」
「申し遅れました。私はダイバー株式会社ダンジョンライブプロダクション事務所の
頭を下げながら名刺を渡してくる。
受け取った名刺には当然、会社名や役職、名前や連絡先などが記されている。
「え!? ダンジョンライブってあの!?」
「知ってんのか」
「知ってるも何も超大手のDtuber事務所だよ! C級以上の探索者を200人以上抱える今1番勢いのあるDtuber組織と言っても過言じゃない!」
「ふーん」
そんなのがあるのか。
まぁ、どうでもいいな。
みなみは少しかしこまった様子で挨拶をする。
「初めまして。仰られた通り私は水沢みなみです。こちらは天城滅也くんです」
「ああ」
「ありがとうございます。お二人の活躍はかねがね聞き及んでおります」
「それで……一体どういった要件でしょうか?」
「お二人には今回お話しがあって参りました。具体的には……うちの事務所に来て頂けないかと」
「……もしかして勧誘ってことでしょうか?」
「そう捉えて頂いて相違ないです」
表情を変えずに淡々と、業務的に話す男。
完璧に仕事として来ているのだろう。
「俺はどうでもいいな。興味ねぇ」
「私もソロでやると決めているので……」
「左様ですか……あの、少しお話が聞こえてしまったのですが、何やら強力な魔物が出現するダンジョンをお探しとのことで」
「ああ。そうだが」
「でしたら一度事務所でお話しさせて頂けないかと。我々がもつ情報にはネットに転がっていない物も多数ございます。もちろんそこには探索者ギルドが所有していない情報も。きっとご期待に添えるかと思います」
「へぇ……」
そいつは少し興味があるな。
企業に所属する予定はさらさらないが、その情報だけでも手に入れるのはありだな。
「そう……ねぇ滅也くんお話だけでも聞いてみていいのかも」
「そうだな」
「ご安心を、長いお時間は取らせません」
「じゃあ行ってみるか」
「分かった! ということで柳さん、お願いしてもいいですか?」
「ありがとうございます。早速ご案内いたします。車を用意していますのでどうぞこちらへ」
そうして俺達はダンジョンライブの事務所まで行くことになった。
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