第4話 はいしんだぁ? 

 なんか女がやられそうだったから、とりあえずこの巨大トカゲを吹っ飛ばしておいた。


 遠くに飛ばされたトカゲは奥の方でひっくり返ってもう微動だにしない。


 一撃で動かなくなったな。いい所にパンチが当たったらしい。


“すげぇぇぇええ!”

“え? え? 夢か? もうダメかと思った……”

“何者やこいつwww”

“誰でもいい! まじでありがとう!”


 目の前の女は信じられないことが起きたかのように目を見開き茫然と俺を見つめていた。



 ああ? なんだその反応。お前もここに探索に来たんじゃないのかよ。


「はへ? F……級……だよね?」

「だからなんだよ。何級だろうが関係ねえだろうが」

「……」


“んなわけねーだろ!!!”

“ランクでほとんど強さは決まるんだが!?”

“なにこいつww”

“やば! 今日配信見てて良かったぁ!”

“化け物あらわる”


 俺の返答に対して何を思ったのか首を傾げて言葉を失っている。



 しばらく石像のように微動だにしなかったが、急に「はっ!」と声を放ち、直立に立ち上がった。



「……と、とにかくお礼を言わないと! 君! 私を助けてくれてあ――」

「おい。なんだこの機械は」



 女が正気を取り戻していたが、そんなことよりも俺は周りでヒュンヒュン飛んでいる不審機械が気になっていた。


 機械がまるで意思を持っているかのように動いている。


「あっ! それはドローンだよ! 配信するための」

「どろーん? というかはいしんってなんだ」

「え……配信を知らないの?」

「知らねえな。流行ってるのか?」


“は?www”

“今時そんなやつおるんか?”

“化石の時代を生きてらっしゃる?”

“こいつもはやダンジョンに住み着く現住人じゃねえのか”


 どろーんだのはいしんだのそんなこと言われても全く分からん。


 テレビなんてきょうび見ねぇからな。


「まぁいい。おい。俺はこのまま帰るが、お前はどうする?」

「え? ど、どうするって……」

「一緒に帰るかって聞いてんだ。さっきやられそうだったろ」

「あ……いいの?」


 女はまるで藁にもすがるような表情をしている。



 なんだよ。そんなに限界だったのか?



「別に構わねえよ。手間が増えるわけじゃねえ」

「ありがと――」

「じゃあ手を出せ」

「え? は、はい!」


 ちょうど3時間が経った頃合いだ。指輪が再び使用可能であろう。


 確か手を繋いでいれば一緒に脱出出来るはずだ。随分昔に試しただけだからあんまり覚えちゃいないが。



 女と手を繋ぎ、「転移」と呟くと視界が切り替わり、気づいた時には俺達はダンジョンの入り口に戻ってきていた。



「ふえ? なんで外に」

「なんでもいいんだろ。じゃあな」

「えぇ!? ちょっと待って! 話を――」

「興味ねえよ。あばよ」


 もう危険はないだろう。これ以上関わる理由もない。


 女が何か話しているのを遠耳で聞きながら、俺はその場を後にした。






  ◇






「行っちゃった……お礼……言いそびれちゃったよ」


 私は助けてくれた男の子が遠くに去っていくのをただただ見ている事しか出来ないでいた。


“話くらい聞けよあの野郎!”

“でも助けてくれた人に文句は言えねぇ……”

“そもそもどうやってここに戻ってきたんだよ”

“というかF級がなんであんなに強いんだ!”

“ぐぬぬ、みなちーの肌に勝手に触れやがって………!”

“ユニコーン君激おこで草”


 チャット欄では色々な趣旨のコメントが流れている。


 私の中にも様々な感情がぐるぐると回り理解が追いついていない。


 なんでダンジョンに穴が空いたの? あそこはどこ? 助けてくれた男の子はなんであんな場所に? そして何者? なぜここに戻ってこれたの?


 そして私に今浮かんでいる1番の疑問。




 ――それはF級なのにあまりにも強すぎたこと。




 強さのベースはほとんど、覚醒した時のランクで決まる。そしてそこから能力が大きく変動することはない、というのがこの世の常識だ。


 ゲームなどと違ってランク詐称なんて概念すら存在しない。


 だってその時のランクから変化しないのだから……


 F級が強い、なんてことは常識的に考えられないことだ。




 全てが謎だらけ。




 ただ今は配信中。頭を振ってその疑問をいったん遠くに追いやる。


 少し強張りながらも私はカメラに向かって笑みを浮かべた。


「な、なんだが事態が飲み込めないけど、私は無事生還する事が出来たよ! まだまだお水あげられるね!」


“みなちぃぃぃー!”

“よかったよぉぉぉ”

“俺は今日、奇跡を見た”

“オアシスはまだ健在だったか……”

“ちっ、なんで生きてんだよこいつ”

“さっきのアンチか? おつww”

“みなちーは不滅だ!”


「と、ということで急で申し訳ないんだけど、こんな所で今日の配信は終わるね! 詳細は後で動画にでもあげようかな! お疲れ様!」


“うんうん”

“おつすい”

“ゆっくり休んで”

“大変だったね。お疲れ様”


「ばいばーい!」



 そうして私は配信を終えた。



 とりあえず家に帰ろう……頭の中がぐちゃぐちゃだ……





―――――

 

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