=side升=
第46話
藤原の体調は、翌日にはほぼ元通りになっていた。
起き抜けのひととき、台所のテーブルで使用人3人が顔を突き合わせ、1日の仕事の分担を決める。
増「俺はとりあえず洗濯だよね。まーったく、ここんとこ量が多くて困ったもんだよ」
藤「………」
ヒロの言葉が、さながらハリネズミのようにちくちく藤原を刺している気もするが、まぁあえて流して。
升「じゃ、俺は掃除と…食べるものは何を用意すればいい?由文さまの具合は?」
藤「寝てれば何とか。風邪みたいな感じだから、俺に作ってくれたような食事で大丈夫だよ。あとの世話は俺に任して」
升「掃除も手伝ってな」
藤「ん」
しかし、藤原と入れ替わりのように、今度は肝心の旦那さまが寝込んでしまった。
増「秀ちゃん、庭の手入れは?」
升「う~…明日以降に回そうか」
増「わかった」
打ち合わせの後、続けて朝食を済ませる。
その最中、ヒロが何気なく「ご主人さまの風邪って、口うつし?」という爆弾発言をしてくれて、思わず苺ジャムの入った瓶を床に落としそうになった。
藤原もさすがに数秒間固まってたけど、やがて観念したように「降参」と言った。
――あの方を抱きしめたいと思ったことは、本当は何度もあった。
――でもそれでは結局、金で彼をがんじがらめにする男たちと同じになってしまうから…そんな名前も分からないような連中と一緒なんて、それだけは嫌だったんだ。
――それに、もう男性と関係を持つことが原因であの方を悩ませるような真似はしたくなかったし…
ぼそぼそと喋る藤原の前に、わざと乱暴にカップを置いてやる。
升「ほれ、お茶」
増「ぐだぐだ言ってないでさ、一つだけ教えてよ」
藤「?」
増「ご主人さまは幸せなんだよね?」
藤「ああ」
よし、即答。
男らしくて良い。
升「それならいいよ。俺たちは」
増「ま、理不尽に洗濯物増やすのは勘弁してほしいけどね」
升「せめて自分で洗えって?」
増「ふふっ」
藤「…。ごめんなさい」
ハリネズミを2匹に増やしてやったら意外と素直に謝ってきたのは、どうかと思ったけどな(笑)
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