=side増=

第42話

パーティが終わった。従者たちが集まる部屋にも、それぞれの主人の帰宅が知らされてくる。



増「…遅い」



顔見知りの他家の使用人が続々とその場を辞していってしまい、取り残される俺。

おかしいなと思った。

いつもなら(というほど回数をこなしてるわけでもないけど)、由文さまはそんなに意味もなく時間に遅れるようなことはないから。



増「しょーがないなぁ」



あまり気は進まないが、大広間の方へ行ってみよう。もしかしたら、藤原も一緒になって何かリウ様と話をしているのかもしれないし。


口の中で「失礼致します」と呟きながら扉を開けると、すぐそこに探していた2人の姿があった。

声をかけようとして、藤原が上着を脱いでいることに気づく。というか、着衣の至るところにくっついている草や花びらを取っているようだ。



藤「それにしても、焦りました」

直『何が?』

藤「ご主人さまが家を出ると仰った時です。街へ戻られて、また以前のような生活に戻られるのかと思ったら…とても平静ではいられませんでした」

直『………』



少しの沈黙。そして、照れたように微笑む由文さま。



藤「それに…自由の身となった貴方を、いつまたリウ様のような方が連れ去ってしまわないとも限らない」

直『…ごめん』

藤「ご主人さまがお謝りになることではございません。…ただの、私の心の問題です」

直『じゃあさ。もし今俺が、リウくんの元に行くって言ったらどうする?』

藤「…行かれるのですか?」

直『行かない』

藤「それではお話が進まない」

直『そうだね(笑)』

藤「笑い事ではありませんよ」



ほんとですよ。何がどうなってそんな話になったのかは知らないけれど、勘弁してくださいってば。



直『万が一行くとしたら、藤くんも一緒じゃないとやだなぁ』

藤「私が?あの方にお仕えするのですか?」

直『違うよっ、俺の専属!』



あははは、と笑う声が響く。

よく見れば、部屋の反対側ではリウ様とシンが面白くなさそうな顔をしてこっちを見ていた。


う~ん…何がどうしたのかさっぱり分からない。

ま、帰ったら藤原にゆっくり聞かせてもらおうかな。

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