第25話

無言のまま、彼もまた3人の墓参りをした。

そして立ち上がると、俺にこう話しかけてきた。



「藤原さんって…どんな人だったんですか」



即答するのを躊躇うような、問いかけ。



『………音楽、でしたよ』



ようやく俺の口から出てきたのは、そんな言葉だった。



『あの人は音楽を愛してたし、音楽とか言葉とかに愛されてました。それがそのまま仕事になって、きっと本人もリスナーも幸せだったんだろうけど…本当はね、他の人間が触っちゃいけなかったんですよ』



同い年のファンは、黙って聞いている。



『きっと俺たちだって、あんまり関わりすぎるべきじゃなかったのかもしれない。藤くん自身は、天使でも神様でもない人間だったけど…。あぁ、でもだからこそ、自分のことわかってくれる人間に周りにいてほしかったのかな。…もう、わかんねーな…』






それからしばらく黙ったまま、遠くで反射する水面を見つめ続けた。






藤くんの作る曲は、どんな種類であれキレイだった。

この世の汚れた部分すべてを引き受けて、それを光にかえて放出するような、生命と魂を込めたもの。






秀ちゃんは、どうして死ななきゃならなかったんだろう。


ヒロが本当に衝動をぶつけるべきは、誰だったんだろう。


藤くんが守りたかったのは、いったい何だったんだろうか。


俺が望んだのは…






「直井さん…。どうか、お元気で」


『…ありがとうございます』










―――それが、刑事が直井に会った最後だった。


首からぶら下がった銀のロケットが、最後まで目に焼き付いて離れなかった。


せめて、生き残った彼の今後の人生が少しでも幸せなものになるよう、祈った。

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