【CHAPTER 01】
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満天の星空。
月光の絶えた夜を迎える度に、僕は思い出す。
五年前のあの日も、こんな夜空だった――
十二歳の誕生日は〝ドラキナ乗り〟の家系に生まれた者にとって特別な日になる。
それまで眺めるだけだった空へと、自ら翼を広げて飛び立つことを許される日だからだ。
とはいえ僕の場合、母の機体に同乗させてもらうだけなのだけど、そんなことはどうでもよかった。何より重要なのは〝ドラキナで飛べる〟ということ。
「ベルの次はカイリかあ……オイラもあとちょっと早く生まれてたらなあ」
格納庫までついてきた幼馴染のクーゴがそう愚痴をこぼす。
「まあ頑張れよ。オイラもすぐにお前達に追いついてやるからな!」
その張り切り具合ときたら、これから実際に飛ぶ僕よりも活き活きとしているくらいだ。
「期待しないで待ってるよ、クーゴ」
「よく言うぜ、カイリのくせに!」
一歩先んじたというささやかな優越感に嘲笑って見せる僕に対して、クーゴは前歯の抜けた間抜けな笑顔でそう返した。
「よおし。じゃあ先輩のカイリ君に出題だ――そもそもドラキナとは何か。答えてみな」
また始まった。
思いつつ調子を合わせて丁寧に答えてやることにする。
「殲竜の身体を素体として造られた飛行機械のことです!」
〝ドラキナ〟――人類の敵たる殲竜の骸を改造、機械化した航空機だ。
とは言うものの機体を構成する部品の大半は殲竜そのもので、大きな違いは頭部が涙滴型の風防が覆う操縦席になっているくらいのものだ。
ちなみに僕が乗る母の機体は、純白の一色に染められた体長二十メートル程の凡庸な複座型戦闘機で、操縦席の側面に朱色の不死鳥のエンブレムが描かれていることから〈フィーニクス〉――通称〝フィー〟の愛称で呼ばれていた。これは母ルティカが絶望的な戦況であっても必ず生還したという逸話からとられたものだ。でも竜なのに鳥とは皮肉めいているなと、このときの僕は思っていたし、今も思っている。
「そんじゃあもうひとつ聞くぜ先輩のカイリ君。〝ドラキナ乗り〟とは何か」
「ドラキナに乗って、空を自由に羽ばたく人達のこと。そして――」
僕は声を一段と張り上げて叫んだ。
「今、僕達がいちばん憧れている人達のことです!!」
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