第4話 ダンジョンの深層

ダンジョンの中は、予想以上に広く、複雑だった。


せつなとケイルは、順調に進んでいるように見えたが、足元に響く物音が不安を煽る。時折、壁から滴る水音が響き、天井の低い通路では息をひそめて歩かなくてはならない。しかし、せつなはその暗い世界にも少しずつ慣れてきていた。


「ケイル、あの先に光が見える…」


せつなが前方を指さすと、ケイルはその方向に目を向けた。


「…おそらく、それがダンジョンの中でも重要な場所だろう。慎重に行こう。」


二人はさらに進み、光の源へと近づいていった。そこには、大きな扉が待ち構えていた。その扉は、まるで何かを守っているかのように荘厳で、背筋が伸びるような気配を感じさせる。


「これが…ダンジョンの奥にある扉?」


「そうだ。だが、簡単に開くわけではない。中には、ダンジョンの守護者がいる可能性もある。」


ケイルは慎重に扉の前で立ち止まり、周囲を確認した。その時、突如として扉がひとりでに開いた。せつなは驚き、身構えたが、ケイルは冷静に言った。


「恐らく、守護者は既に目を覚まし、この扉を開けた者を試すつもりだ。」


扉が完全に開き、二人はゆっくりと中に足を踏み入れた。扉の向こうには、深い闇の中でひんやりとした空気が漂っていた。


「気をつけろ、せつな。」


ケイルの警告が響くと、部屋の中央に立っていた巨大なゴーレムが動き出した。その足音は大きく、迫力満点だ。石でできたその姿は、圧倒的な存在感を放っていた。


「これは…!」


せつなはその姿に圧倒されるが、すぐに気を引き締めてケイルを見た。


「私が支援するから、ケイル、先に行って!」


ケイルは少し驚いた顔をしながらも、すぐに頷いた。


「わかった。お前の力にかける。」


ゴーレムは巨体を揺らしながら近づいてきた。ケイルは素早く剣を抜き、その一撃をゴーレムに放った。


しかし、ゴーレムはそれを軽々と受け止め、無表情にケイルに迫る。ケイルは身軽に身をかわし、再び反撃を繰り出すが、ゴーレムの動きは予想以上に速い。


「どうしてこんなに強いの…?」


せつなは焦りを感じた。しかし、すぐに自分の役割を思い出し、手を前に差し出して呪文を唱えた。


「『霊縛の束縛』!」


すると、ゴーレムの足元から無数の霊的な鎖が現れ、ゴーレムを縛りつけた。その間にケイルは反撃の隙をつくり、再びゴーレムの体に深い切り傷を入れる。


「いけ!ケイル!」


ケイルは一気にゴーレムの弱点を狙い、剣を振り下ろした。その一撃が決まり、ゴーレムは大きく崩れ落ち、動かなくなった。


勝利の瞬間、せつなは安堵の息をついた。


「やった…!」


ケイルも息を切らしながら、せつなを見て頷いた。


「お前の支援がなければ、もっと時間がかかっただろうな。ありがとう、せつな。」


せつなは照れくさそうに顔をそむけながら言った。


「でも、まだ…まだ私は強くなりたい。」


ケイルはその言葉をじっと聞いてから、少し笑顔を見せた。


「その気持ちが大切だ。強くなるためには、今後も数々の試練が待っている。しかし、お前にはそれを乗り越える力があると信じている。」


その言葉に、せつなは改めて決意を新たにした。仲間と共に冒険を続ける中で、もっと強くなりたい――その想いが胸に響く。


「次は、もっと大きな試練が待っているかもしれない。でも、私は絶対に諦めない!」


ケイルはその言葉を静かに聞き、再び先に進むように歩き始めた。



次回予告:

ダンジョンを突破したせつなとケイル。だが、待ち受けるのは新たな強敵と、さらに深い闇。二人の冒険はまだ始まったばかり。

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