第2回:カルチャーショック 〜WEB小説と公募原稿の違い〜

 間髪入れずに第2回、灰崎凛音です。僕は東京在住なのですが、アレですか、僕のiPhoneはバグっているのでしょうか、何ですか体感温度5℃って。三日くらい前26℃あったよ? 俺、半袖Tシャツ一枚だったよ?

 気温と気圧の乱高下は老体には厳しいものがございます。読者の皆さまにおかれましては、どうかぬっくぬくに着込みまくってもっふもふの布団にて安全第一でお過ごしくださいませ。

 


 さてさて第2回は、第1回の末尾に書いた「師匠からの教え」のひとつである「書式」か「事前案」にしようかと思ったのですが、否、これは俺の覚え書きだ! ということで、タイトルの通り「カルチャーショック」にいたします。


 今回の主旨は、「WEB小説を書いてるけど公募に挑戦してみたい」という方や、「公募勢だけどWEBにも投稿してみようかなぁ」といった書き手さん向けに、一応双方の経験、さほどの実績はないけど経験だけはある僕が、あくまでもどこまでも覚え書きとして、そしてネタとして、「カルチャーショック」という言葉を使い、


「ここがこんな風に違うんよ」


 とご紹介する感じにしたいと思っております。



 散々書いておりますが、僕は長年「公募勢」でした。

 しかもライト文芸ではなく五大文芸誌の新人賞や、一般文芸のエンタメ系新人賞に応募しておりました。

 ですので、上に書いた「書式」というものは厳守するのが当然、ってか話はそれからだ、みたいな風潮がございまして(需要があれば「書式」もご紹介したいです)。


 例えば、これ。


 この改行(「ございまして」からの「例えば、これ」からの「この改行」)は、各々「一行」です。これは純文の賞に多いように感じられるのですが、一行改行は好まれません。段落を区切る時は二行改行が基本です。

 あとはまあ、沈黙を表す際は「三点リーダ」=「…」を二つ、つまり「……」が基本で、「、、、」や「・・・・・・」は、って、あれ?! 書式の話になってる!!



 まあまあ、僕もね、その書式を遵守することが「当たり前」の状態で、一度、カクヨムにアカウントを作ったことがあるのですよ。


 しかもね、最初にアップしたのが中篇小説で、原稿用紙で120枚くらいだったんですがね、章立て(チャプター分け)が一切無い作品だったので、


 1エピソードに全部コピペしちまいました(単純計算で48000字)。


 今考えるとアホかと! 馬鹿かと!! リーダー・アンフレンドリーどころの話じゃねえええええ!!!


……まあ、皆さまもお察しの通り、ほぼほぼ読まれなかったんですが、奇跡的に読破してくださった方から★3のレビュー(本文付き)をいただきまして、「うおっ、全然知らねー人に褒められた!」と感動いたしまして(カルチャーショック①)、応援もいただきまして、ただコメントにて、


「面白かったけど、画面が文字でびっちりだから、もっと改行した方がいいかもね」


 とアドバイスされたんですが、ここでカルチャーショック②です。


——文字でびっちりって、当然じゃね?


 だあああああもう分かってねぇコイツゥゥゥ!!!

 っていうか白状しますよ! 僕、他の作品とかリサーチとかを一切せずに自作ぶっ込んだんですよもう、ああんもう馬鹿ああああああ!!!!!


(しかし今冷静に振り返るとかなりクセの強い一人称小説でした。なんでアレ読破できたん……)


 そしてですね、それが確かカクヨムがかろうじて存在してた頃の話でして、2018年頃に、ライト文芸のアイディアを思いつきまして、まあその頃は世間は「ラノベ」が主流! といった風潮であったわけですが、僕は決めましたよ。


「ライト文芸を書くからには正当に評価される所に発表しよう!」


 この時点で僕、既におかしいです。

●おかしい理由①ラノベやライト文芸をろくに読んだことがなかった(西尾維新を読んで「なるほど、これがラノベというやつかぁ!」とか言ってた)

●おかしい理由②ガチガチのお堅い文体で純文を書いている人間が、いきなりラノベ調の文体でラノベ的ストーリーを書けるのか? つかラノベのお約束とかあんだろ

●おかしい理由③いざとなったらラノベ読みの弟と家人に直してもらおうとかいう他力本願極まりない戦術を練っていた


 で。


 最初は、カクヨムではなく別所で連載を始めました。ちなみにジャンルは現代のラブコメでした。ちょっとした事情で今は公開できないのですが、ええと、その、カテゴリ的にはそのサイトでは「ライト文芸」で連載してたんですが、


……カテゴリ・ランキング、首位獲っちゃった……


 や、これは僕も結構頑張ったというか、意識しました。

「難しい単語や言い回しは使わない」、「めっちゃ改行する」、「情景描写は最低限」、「心理描写は直球で」、「読者の方が『うおおおお続き気になる!』と泣き叫ぶようなクリフハンガーを毎回入れる」、「とにかく笑かす」、といった具合に、です。


 そもそも「連載」というのが初体験でしたから(公募は脱稿=完結したものをひたすらに直してから応募するので)、「え、ここがウケるの?!」とか、「うぞ、このキャラ気に入ってるのにスルーされた!」といった、スリルとサスペンスに満ちあふれた執筆体験となりました。

 

 とかやってたら、


……日間ランキング、三週間首位独走……


 でぇぇえええ?!?!


「兄ちゃんは純文学の才能ないけどラノベの才能があるんだよ!」


 と、弟が電話越しに言ってきましたが、もう僕は嬉し泣きと心中複雑な涙で顔面がうるおっておりました。

 ついでに言うと、運営から「書籍化申請可能レベルにバズっとるけどどげん?」といった主旨の自動送信メールも来ましたが、ぐぬぬ、とか言ってる内に人気連載の続編が始まり、すぐに抜かれました。てへぺろ。



 他のカルチャーショックといえば、WEB小説だと「文章の途中で改行する人が多い」という点が挙げられます。僕は敢えて一文を長く書くクセを身につけたのですが(第1回で言及した心の師匠、ル・クレジオ大先生の影響かも)、読点ごとに改行してらっしゃる方の作品を拝見すると、「え、これ小説ゆうより詩のカテゴリ行った方がええんちゃう?」とえせ関西弁が口をついていた時期がありました。


 例えば以下。


 私は今、

 恋人と大好きなカフェに居て、

 彼はコーヒーを、私はアイスティーを、

 一緒に飲みながら、

 日本語でも英語でもない歌詞の曲をバックに、

 言葉なんてなくても、そこには確かに、

 愛があって。


(※三十路卒業済みパンクス野郎が必死こいてイマジンした若いおなごのラブストーリー)(異論は認める)


 誤解していただきたくないのは、こういうレイアウトは、WEB上では非常に読み易い、もっと言えば作品が多く散見されるので、頭ごなしに否定しているわけではない、ということです。


 ただし、公募、こと一般文芸の公募となると話は別です。

 イレギュラー的に、もしくは何らかのトリック、ギミック、意図があって部分的にこういったレイアウトを使う、といった手法はありますが、全編こういうスタイルの書籍、というのは、僕はあまり見たことがありません。



「じゃあどうしろっちゅーねん!」

 と問われたら、僕はシンプルにこう答えます。


「応募すると決めた賞の過去の受賞作品を読んでみてください」


 レイアウトのみならず、自分の作風に合っているかどうか、過去10年分とは言いません、最低でも、2作は読んで見極めた方がよろしいかと、僭越ながら申し上げたい次第。なお、応募要項は隅々まで親の敵のように読み込み、特に「粗筋」や「概要」が要求されている場合は、それに。下読みがあるか否かにもよりますが、こと長篇の場合、内容を纏める力量などがそこで問われ、一部の下読みさんは粗筋がつまらないと本篇を読まない、なんて噂も聞いたことがあります(真偽は不明です)。


——あれ? これネタじゃねえ! マジレス(死語?)になってる!!!


 じゃあまとめはタメ語で行くわぁ。

 逆パターンな。俺と同じく公募からWEBに舞台を移す方々。

 今俺Creepy Nutsのキレッキレの曲聞いてるからガンガン書くぜ!


 とりあえず改行だ! 強調したい台詞は前後5行くらい改行しても許されるぞここは!! ビックリだろ?! 俺もそうだった!!

 そんでこれだ!!!!!! 感嘆符を2個以上打っても誰も怒らねぇ!!!!!

 純文勢はな、ルビや開くことについて過保護になった方がいいかもな! これは誰が悪いとかそういうわけでもねえがな、難しい漢字を使うとスルーされる!! わざわざ読み方をググったりしてくれる読者が居るかは俺も分からん! だからルビ振るか開け!! 譲れないなら第0話に用語集とか置いてもいいかもな!!


 用語集といえば、設定厨のそこの貴様!!! これはWEB小説書きにも言えることだがな、異世界転生とかのメジャーなジャンルでもない限り、造語や専門用語は各エピソードとは別途、「用語集」とか「設定集」とかそれっぽくてクールな名称かぶせて載っけとけ!! それが多すぎる場合は、もう文体とストーリーテリングで『読ませて』行くしかねえな!!!


(深呼吸) 


 失礼いたしました、僕は元が由緒正しきチバラキのヤンキーの末裔ですので、かのような言葉遣いをするtゲホゲホゲホ(吐血)。


 いい加減長くなってきたので終えますが、第3回どうしようかな。

 これ覚え書きだから、登場人物をどれくらいディグるか、灰崎流の紹介でもしようかしらん。ではでは、失敬。

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