[賞応募版]何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い
崖淵
prologue
第1話 蘇る勇者と追い詰められる魔王軍
―――ザシュッ
勇者の最後の力を振り絞った渾身の一撃を済んでのところでいなし、返す刀で勇者の首を
―――ハァハァハァ。危なかった。薄氷の勝利だった。
魔王軍総司令官アドラブルは、魔王軍の勝利を喜ぶ周囲の喧騒を他所に少し沈んだ表情を浮かべていた。この先を想えば浮かれる気分になれなかった。
アドラブルは知っているのだ。この数分後、一年前に時が巻き戻る事を。そして時が巻き戻る度に勇者は蘇り、更に強くなってまた魔王軍に挑んで来るのだ。
―――次はもう勝てないかもしれない。
魔王軍総司令官であるアドラブルが敗れれば、後に控えるのは魔王陛下だけ。
先代陛下から後を継いだばかりの幼い魔王陛下では、まだ難攻不落の魔王城が残っているとはいえ、アドラブルを倒した勇者率いる人類軍の前では長くはもたないだろう。
―――フワワワワヮヮ
巻き戻りの兆候である周囲の景色がぼやけていく現象が始まった。
そしてまたそのままいつものように時が巻き戻った。
ちょうど一年前の新魔王就任式まで時は巻き戻る。
アドラブルは鬼人族と呼ばれる身体能力が非常に優れた種族の出身だ。人類側からは魔族という呼称で一括りにされるが。
アドラブルは魔王軍では魔王を除けば最高の地位である総司令官として式に臨んでいた。鬼人族ならではの頭一つ飛び出るくらいの高身長と目を見張るほどの見事な体躯を誇り、短めの銀髪がキレイに分けられたその額の中央には鬼人族の最大の特徴である低めの角を黒光りさせながら参列しており、他の列席者の目を惹いていた。
なおアドラブルは長年魔王軍の総司令官をしているのでそれなりの年齢ではあるのだが、鬼人族の特徴なのか非常に若々しく人族で言えば30前後といった容姿に見えた。
そして新魔王就任式と同時刻、奇しくも人族の間では勇者召喚が行われていた。
強大過ぎた先代魔王の死を人類は知り、遂に反撃の時と多大なる犠牲を
一年後、魔王軍と人類軍との最終決戦が行われる。
しかし、強大な先代魔王がいなくなったとはいえ20万余の大軍をアドラブルに率いられた魔王軍は、人類軍がかき集めた精兵を圧倒し完膚なきまでに叩き潰し完勝する。だがその直後、この結果を嘲笑うかのように1年前の新魔王就任式まで時が戻るのだ。
そしてそれ以来最終決戦が終わる度にそのような時の巻き戻りが起こり続けた。だからといってそれを唯一知るアドラブルに何が出来る訳でもなく、そして魔王軍が危なげなく勝利を重ねている状況は何の問題もなかったため、不思議な事もあるものだと思いながら時の巻き戻り――周回を重ねた。
人類の中で最大の国家であり最も
まだ魔王軍の方が倍も兵数が多いとはいえ、当初程の優勢ではなくなっていた。
ただ、魔王軍総司令官たるアドラブルも無能ではないので、その人類軍の強大化をただ手を拱いて見ていた訳ではない。まず人類側の兵士が増えた原因――帝国内の反乱が収まった理由を探った。これは後に勇者一行の活躍を知る事になる。
そして魔王軍の主力のゴブリン兵はほぼ武器を持たず手ぶらの参戦だったので、粗末ながらも木の棒や棍棒を持たせたるようにした。これらも回を重ねるごとに支給される武器の質も徐々に良くなったりしただけでなく、強い兵には金属製の武器や防具も配備されるようになったりもした。
最終決戦において人類側も兵数が増えたせいか簡単に敗北する事もなくなっていた。戦場全体では魔王軍の方が遥かに兵数は多いので、戦争が長引けば人類側が劣勢になるのは明らかだ。そこで人類側も精鋭を結集し血路を開いてアドラブルの本陣まで決死の突撃を仕掛け一発逆転を狙うまでになっていた。
もちろんその中核を担うのは勇者一行である。最初は辿り着いた時点で既に瀕死だった勇者一行。アドラブルが手を下すまでもなく、魔王軍の兵に討ち取られていった。
そして周回を重ねる事18回目。
最終決戦に現れた勇者一行のレベルは55にまで上昇していた。アドラブルはレベル90のまま不動であり、まだレベル差があるとはいえ勇者一行は4人パーティーである。そろそろその大きなレベル差が1対4という数の不均衡差で釣り合うようになってきていた。
もちろん戦場ゆえにアドラブルの周囲の兵士や魔物達も戦っているのだが、もう彼らではレベル差が開いた勇者一行の足止めができなくなってきており、アドラブルが1対4になる局面を強いられるようになっていた。
19周回目の新魔王就任式においてもこれまでと同様、魔王軍を代表して幼き新魔王陛下に頭を下げ忠誠を誓っていたが、頭の中では今周回で勇者一行相手に勝ち切る自信があまり無く悩んでいた。
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