20.5 微睡みの泡沫[天使の救済――■■■]
『 07.『彼女』の生い立ち』で書かれた『邂逅前』の小話で
『神録伝承Topic7』に記された『天使による調整業務』のお話
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「――そこの『あなた』、少しお時間よろしいかしら?」
その声に私は――視線を向けるだけして通り過ぎた……。
――鳥居の傍。そこに、いかにもな黒マント姿の女が座っていた。箱型テーブルに水晶玉を置き、顔はベールで覆っている。……コッテコテの『古い占い師』スタイル。
「(コツコツコ……)…………はぁ。……なんだ? 怪しい売りつけだったら女でも…………『ラリアット』するぞ?(ダルい顔)」
「うふふ。本当に、それが選んだ末の言葉ですか?」
冗談半分に牽制してみるが、相手の女は動じなかった。むしろ楽しそうに微笑んでくる始末。……『アイアンクロー』と悩んだだけだ。
――季節は秋。午前中の大雨のせいで、花に群がる虫のようにまとわりつく湿気った外気。『いつも通り』の退屈で、クソ鬱陶しい学校の帰り道だった。
たまたま『いつもと違う道から帰るか』と思い至ってしまったのが運の尽き。いつもなら無視して通り過ぎるはずの声掛けに、その日はなぜか足が戻ってしまった。
(……なんでだ? なんで私、『
冷静な
「突然お声がけして、ごめんなさい。怪しい見た目なのは認めるけど、わたし、悪い人じゃないのよ? ただ、あなたからすごく『悪い気』が見えたから、気になって声をかけただけなの」
そういって微笑んだ『占い師』の瞳は、澄んだ青色をしていた。どう見ても日本人のそれじゃないが、流暢な日本語で話す女。……偏見込みで、ますます怪しい。
「『悪人』ってぇのは、そもそも自分を『悪人』だと気づいてないヤツのことを言うそうだ。だからアンタの言ってることは――『私は悪人だ。お前に悪いものが憑いてるから黙って座って金落とせ』って、私のフィルターでは聞こえるんだがな?」
「うふふふ、ずいぶんとひねくれた考え方をするんですね、あなたは」
「悪かったな。今まで出会ったヤツらが揃いも揃って『クソ』だったんで、曲解した考え方が癖になってるんだ。……アンタは怪しすぎるから、これでもマシな対応をしてるつもりだぞ?」
ワザと皮肉を浴びせても、占い師の女の雰囲気は崩れなかった、それどころか、私に『悲し気な眼差し』を向けてくる。
「――本当に、『全員』でしたか?」
「…………一人を、除いて、かも」
「それは、幸いです。……その人のことは、大事にしなくてはなりませんよ?」
「…………」
……なぜだろう。初対面なはずなのに、この女に問いかけられると口が勝手に答えてしまった。……外面がいい『お天気お姉さん』みたいだからか?? 笑顔でもって警戒心を消し去ったっ、みたいな……んなわけないか。
(ジジイ以外で『普通』の会話したのって、初めてか? ……いや、『初めて』はさすがに卑下しすぎか……)
――ただ、不思議と『警戒心が薄れ』、
「――あなたと親しい人は、多いですか?」
「……ジジイ……身内一人だけ」
「――今の生活に、不満はありますか?」
「……周りの視線とか、絡まれるのが超ウザい。……けどまぁ、『辛い』と思ったことは……ない、か?」
「――あなたを害した人のことを、どう思いますか?」
「別になんとも……とは言わない。ただ、『相応の倍返し」を私もしたからな。それでもう終わりだ」
「あなたは……恐ろしく、『強い心』をお持ちなのですね」
「恐ろしく、て……ジジイがうるさいだけだ。『周りにかまうな、己を見返せ』って……(すねて顔を背ける)」
「うふふ、その変わった考え方は、おじい様の影響が大きいようですね」
「おいやめろ。ジジイの影響なんて受けてたら、こんなクールビューティーが出来上がるわけないだろ。『……私のこの考え方や生き方は、私の経験で作り上げたものだ!』」(ドサクサで漫画のセリフ言えたな ……バレてないよなぁ?)
「あら……うふふ、それはごめんなさい(ニコニコ)」
――その後も、しばらくカウンセラーみたいな一方的な質問攻めを受けた。……『金』の話しが出たらど突いて逃げよう、とも思った。
でも、最後に投げかけられた言葉は少し違った。……いやそうでもないか?
「――もし、あなたがどうしても『辛い』『逃げたい』と感じ、誰も頼る人がいない時は――また
「最後の最後で、
「うふふ、買うのはあなた次第ですよ? でも、
「うそくさっ……。てか、その水晶玉最初から一回も使ってないだろ?」
「うふふ。『占い師』っぽいでしょ?(ニッコニコ)」
「うわでたそういうのっ! ……笑顔でとんでもないカミングアウトしたぞコイツっ(ドン引き)」
「うふふふ、冗談です」
どうやら私は、この女に遊ばれているらしい。……水晶玉ぶつけんぞ?
「話が長くなりましたね――あなたに、『良い出会い』がありますよう祈っています。……時間を取らせてしまったので、『これ』をどうぞ。わたしからの『御守り』です。タダですよ?(ニコニコ)」
そう言って、占い師の女は安そうな『虹色の御守り』を手渡してきた。……手作りなのか、これ?
「このタイミングの『タダ』とか怪しすぎだろ。…………まぁ、貰えるものは貰っとくけどなっ!」
(……これは、この女の怪しい『話術』に乗っかたふりをしてるだけっ。決して、課金できるかな? なんて思っちゃいない……あ、手触りが五円玉だ。あとで取り出そう……)
「当たりのおみくじだと思って、『肌身離さず』お持ちください――
――そう言って『占い師』の女は、
「――――――……は?」
――曇天の空の下。気づけば私は、鳥居の前でぼんやりと立ち尽くしていた。
(……あれ、なんで私……鳥居の傍で突っ立ってるんだ?)
(あれ? 帰ってる途中で、別の道行こーってなって……棒立ち?)
「……おいおい、この若さでボケたか私? 勘弁してくれよぉ、ジジイじゃあるまいし……あのジジイってボケるのか?」
……結局、考えるのがめんどくさいから『若気の至り』ってことにした。なんか、狐につままれたような、『イヤじゃない出会い』があったはずなんだがなぁ。……モヤモヤする。
「う~ん……?」
うんうん唸りながら、改めて帰路につこうとした――直後だった。
――――――――――――ッ――――――ッッ!!!
タイヤの擦れる甲高いブレーキ音。遠く離れた前方の道――脇に川岸があり二車両がギリギリ通れるような狭い道で、車が川沿いの電柱にぶつかっているのが見える。
(事故かよ……はぁ)
「ったく、寄り道するんじゃなかったな――――っ」
文句垂れながら、見て見ぬふりもできず事故現場に駆け寄ろうとする視線の端に――『人影』を見た。雨で増水した濁流に流される、『小さな人影』。
「っちッ――――、――すぅーー、ッ!!」
――考えるよりも先に、体が動いていた。鞄を投げ、制服を力任せに脱ぎ捨てる。靴脱ぎに苦戦しながら、インナーとスカート姿で激しくうねる川へ飛び込んだ。
――その時、ブレザーのポケットに入れた『御守り』が、
――――――――――――――――――
「――あむぅ…………しょっぱ……血と汗でマズぅ……うぇ~」
目覚める直前に感じたのは、しょっぱさと妙な苦み、それに血の味が混ざった柔らかい舌ざわりだった。
あまりの不快さに眠気が吹き飛んだ私は、『うぇ~』と唾を吐き捨てながらレンの首筋から離れた。
「……うまくなくて良かったよ」
振り向いたレンが涼しい顔で言った。……私が逆の立場だったら、首を噛まれた瞬間に顎を外してただろうなぁ。寛容な奴で私は嬉しいよ……。
「……俺は不満をぶつけても許される立場にいると思うんですがね。サクさんや」
……全然寛容じゃなかったわ。ちゃんとムカついてたわ、あははは――。
「ぶつけてもいいが、激しく抵抗するで、拳で(ッぐぅ)」
「――力をつけてから挑んます…………」(脅してくんなよ怖ぇ)
ただヤル気を現して拳を握っただけなのに、レンが涼しい顔をヒクつかせて前に向き直る。……いや、それより――
(ぁーー……何だっけ? なんか、不思議な夢を見た気がするんだよなぁ……。『泳いで大物掴まえて』……『喰いついた』、みたいな感じの……ワイルドな夢だったような? う~~ん)
直前に色々あったせいで、夢の内容を忘れてしまったらしい。……喉乾いたからって、魚を丸かじりするような夢を見たのか、私? ……口から雷は吐けないぞ?
「……ん?」
ふと視線を感じた。それは、カラミディアが優し気な眼差しで私らを見ていたものだった。――その、『慈愛に満ちたような視線』がどうも懐かしく感じ――。
「――まぁ、いっか」
めんどくさくなって、私は考えるのをやめた。
――――――――――――――――――
◇サクが現段階で得た『耐性』:97(New)
〈悪臭耐性〉〈嘔吐耐性〉〈低温耐性〉〈寒冷耐性〉〈衰弱耐性〉
〈混乱耐性〉〈戦技耐性〉〈激痛耐性〉〈苦痛耐性〉〈斬撃耐性〉
〈襲撃耐性〉〈打撲耐性〉〈被弾耐性〉〈奇襲耐性〉〈損傷耐性〉
〈欠損耐性〉〈出血耐性〉〈虚弱耐性〉〈疲労耐性〉〈衝撃耐性〉
〈激突耐性〉〈急襲耐性〉〈絞首耐性〉〈骨折耐性〉〈窒息耐性〉
〈混濁耐性〉〈高温耐性〉〈高熱耐性〉〈熱気耐性〉〈熱風耐性〉
〈火傷耐性〉〈外傷耐性〉〈乾燥耐性〉〈魔術耐性〉〈灼痛耐性〉
〈灼傷耐性〉〈失神耐性〉
≪New≫
〈筋損耐性〉〈負荷耐性〉〈反動耐性〉〈筋痛耐性〉〈振動耐性〉
〈呪術耐性〉〈呪イ耐性〉〈弱体耐性〉〈鈍化耐性〉〈痛覚耐性〉
〈急所耐性〉〈刺突耐性〉〈鈍撃耐性〉〈骨折耐性〉〈骨砕耐性〉
〈挫傷耐性〉〈断裂耐性〉〈脱臼耐性〉〈圧迫耐性〉〈内傷耐性〉
〈麻痺耐性〉〈神損耐性〉〈障害耐性〉〈致命耐性〉〈隠密耐性〉
〈喉潰耐性〉〈喉裂耐性〉〈声断耐性〉〈吐血耐性〉〈息難耐性〉
〈瀕死耐性〉〈頭痛耐性〉〈恐怖耐性〉〈弱気耐性〉〈砕顎耐性〉
〈咬顔耐性〉〈撲砕耐性〉〈脳震耐性〉〈寝惚耐性〉〈霞眼耐性〉
〈暗闇耐性〉〈閉所耐性〉〈密閉耐性〉〈臭気耐性〉〈血臭耐性〉
〈腐臭耐性〉〈熟臭耐性〉〈汚臭耐性〉〈穢臭耐性〉〈死臭耐性〉
〈鉄臭耐性〉〈不味耐性〉〈悪腹耐性〉〈腹痛耐性〉〈穢レ耐性〉
〈濁リ耐性〉
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