この恋が、終わらない
音瀬。
ほこりまみれの
退屈な場所を抜けて小さなガラス扉を開くと、木陰の隅に木製の古びたベンチがぽつりと佇んでいた。
ところどころ異なる色合いを持ったそれに違和感を感じて軽く触れてみると、心なしか少し湿り気を感じる。
昨日の今日だ。この陽あたりでは乾かなくとも不思議ではないだろう。
せっかくの日に服が汚れてしまっても困る。
そう思いベンチから離れると、木陰の先で痛いほどこちらを見つめる太陽と目が合ってしまった。
生暖かいそよ風が、やんわりとまつげを揺らす。
風に目を眇めても、瞼の裏までその明るさが届くほど、雲ひとつない高い青。
それはまるで、今日という日を私に実感させるように深く、底のない色だった。
青すぎる空に手を伸ばし、何を思うわけでもなくその温度を手の平で受け止めた。
じわじわと、ゆっくり汗が滲んでいくのを感じる。
君は、結婚する──。
この門出に祝福を謳えるように、私は君との日々を振り返ろう。
酸いも甘いも。できるだけ、艶やかに。
君がこの先もどうか、その名に似合うやわらかな笑みで
私は君との思い出の旅に出る──。
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