第2話
可愛い可愛いと猫可愛がりしているのに、なかなかデレてくれない。
「町のお姉さん達に可愛がられている癖に可愛いなぁ」
「っ、ふんっ」
掛け声と共に手から抜け出してこちらを睨み付ける子供。
「あーあ。もっちりしてたのに」
「うっせー。仕事しろ」
やだ、徹夜したもん。
「徹夜したのにー?」
「じゃあ寝ろ!」
「寝る寝る。お休み」
「止めっ、俺を引っ張るなぁ!」
抱き枕に君を拝命する。
スチャッとユイスを抱き上げる。
まだまだ彼は軽いし幼いので持ち運びは楽だ。
子供扱いされるのが嫌なのか、暴れる。
はっはっはー、暴れても無駄無駄。
こちらの方が背も高いし年上だから腕力でも勝てる。
でもきっと数年後には、背なんか越えられちゃったりするのかもしれないな。
この生意気さが抜けない子がどうなるのか楽しみでもあり、今から何とも気が早いが、寂しさも感じる。
「離せっ。たくっ。お前の明日の仕込みしなきゃご飯食えねぇんだぞ」
「あ、困る。腹ペコ」
「今は食べたから満腹だろ」
言われてみればそうだった。
ユイスはマショリィの管理をきっちりしてくれるので、毎年毎年本当にいい拾い物をしたと実感する。
勿論愛情は本物だよ。
ユイスを撫で撫でしながら「ならやるの見てる」と言うと彼は眠いし、多分お前は寝ると言い切るので、確かに寝てしまうだろうなと苦笑を浮かべる。
愛想のいい子よりも、今はユイスがスキで(愛でる方向)情が移ってしまっていた。
ダメだダメだと思ってしまう。
何故なら、ゆくゆくは旅立ってもらい一人で暮らしてもらい、一人でも生きていけるように考えているのだ。
ユイスには言っていないが、賢いからいづれ察するかもしれないけれど、それはそれで任せる。
「うーん、いい匂い。食欲爆発する」
「だから、さっき食ったろうが」
「味見だもん」
「だもんって止めろ」
むくれればユイスがツッコミ要員を埋めてくれる。
ユイスはからかったりして鋭く望んだ如くサラサラと言ってくれるから嬉しい。
ボケッとしても答えてくれるその人。
「朝が楽しみだ。ふふっ」
ユイスを降ろしてキッチンまで付いていく。
どうしてもその光景を眺めたいから、ジーッと待っている事にした。
見ていても彼は特にリアクションすることなく、淡々と手際よく料理の下準備をしている。
見ていると分かる、彼の器用さは舌を巻く。
グツグツと煮だった音、かき混ぜる水音。
「明日はいつも通り店を出すのか」
うちは露店を出している。
そうしないといつまでも客が来ておちおち休憩も出来ないのだ。
薬師となって少し経ったが様々な事に対応するにはちゃんと時間を決めねば、キリがない。
「うん。でも、明日は早めに閉めて薬草を取りに行こうかと思ってる。まだ店番は任せられないの。悪いわね」
「いや、まだおれは幼いし、店主でもないから舐められるし、客も不安だろうから、気にしてねぇ」
やっぱり彼はとっても賢い。
短い言葉だったのに沢山の含められている内を理解している。
ここで何故任せてくれないのかと駄々をこねたり、むくれたりしてはやりにくい。
物分かりがよくて大変好ましい。
ユイスにおやすみと言い、邪魔になるだろうから退散する事にした。
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