第4話 始まりの朝

「…………さん!兄さん!」


「……おー、おはよう」


「おはようじゃないよ?もう昼だからね?」


「おそよう」


「そういうことじゃないの!」



 なんだか久しぶりにあの時の夢を見た。



 ここ数年は見ていなかったというのに。



 これも昨日の都市伝説オトギバナシが関係しているのか?



 原因らしい原因はそれくらいだ。



 何はともあれ、準備をしなければ。



 ——————————



「よーしじゃあ行くよ!」


「なんでこのクソ暑い中でチャリなんだよ……」



 そんなこんなで荷物を自転車に積み込んだ僕と凪咲なさきは、早速非常階段探しを始めた。



 なんの目星もなく探しても不毛なので、一応この辺りを探そうという提案はしてみた。



 まず初めに探すのは、山の近く。



 昨日この話をしてくれた男の子にもう一度聞いてみると、聞き落としていたのか知らないが山の方に階段が出るとのこと。そんなの昨日は言ってなかった。



 ますます信憑性しんぴょうせいが怪しくなったが、案の定凪咲は言うことを聞かないのでどうしようもない。



 全く面倒な妹だ。



 元はと言えば話した僕が悪いのだが。



 そして、だ。加えてもう一つ問題がある。追いつけないのだ。凪咲の自転車に。



「待て!もう少しゆっくり走ってくれ!」


「え〜」



 引きこもってるくせに運動は欠かさずしてるので普通に僕より体力がある。しかも向こうはやる気に満ちている。追いつけるわけがない。



 何回か言うとやっとスピードを落としてくれた。



 しかも凪咲のやつ、荷物を全部僕の自転車の方に押し付けやがった。



 そのせいで2人分の荷物を全て後輪に載せているのだ。



 おかげさまで非常に重い。



 山へは、まだもう少し遠そうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る