レンドル王子の肖像画
アイス・アルジ
第2話 レンドル王子の肖像画(改定版~読みやすい)
ウィル
しかし、この王家にお世継ぎとなる王子が誕生する事はなく、まもなく王女が二十歳の誕生日を迎えようとしていた。この機会に、
婚礼の儀式は、王国を挙げての、稀に見る盛大な祝祭となった。お迎えするレンドル王子の肖像画が、著名なる宮廷画家のカッセル・ロドにより描かれた。そして、ウィル王宮の黄金の間に、マルガレッタ王妃の肖像画と共に掲げられた。この時から、この肖像画はこの王宮の「繫栄の
お二人は幸福な日々を過ごされていたが、まもなくして、老王が急に病いの床に伏してしまった。この機をついて、かねてより不仲であった隣国のジェランド皇国軍が侵入し、戦争が勃発した。新王子(レンドル王子)は即座に軍隊を率いて応戦した。なぜか期待していた、レンドル王子の故郷、ルブラン国の援軍を得ることは出来なかった。これはルブラン第二王子(ジャフー王子)の嫉妬のためだと噂された。
やがて戦況は悪化し、苦しい戦いを余儀なくされたが、レンドル王子は果敢に戦った。しかしついに、レンドル王子の戦死の悲報が届くに至った。程なくして、ジャフー王子(第二王子)の率いるルブラン国の援軍が到着した。苦戦のウィルランド王国軍は、この援軍を得て戦況を好転し、敵軍を敗走させることができた。そしてついに、終結をむかえた。
勝利を得て、凱旋したジャフー王子は、未亡人となったマルガレッタを第二妃として、ルブラン直轄ウィル国と国名を改め、かつてのウィル王宮を彼の居城とした。一転して、第二妃となったマルガレッタ王妃は、手のひらを返したように、この新たな王子に媚び慕い付き従った。なんと、故レンドル王子の肖像画は、その座を奪われ地下に死蔵された。そして代わりに、現直轄ウィル国王となったジャフー王子の肖像画が、その座に掲げられた。この
やがて直轄ウィル国王(ジャフー王子)は齢を重ね、ルブラン王を継承し、第一王妃の住む故郷のブラン城に居城を戻した。しかし、マルガレッタ第二王妃はウィル王宮に
その頃より王妃は、誰一人として小部屋に入る事を拒むようになり、そして新年を迎える前に、お亡くなりになった。訃報は、直ちにブラン城に届けられた。ジャフー王は精鋭の家来を従えて、昼夜、馬を走らせウィル王宮に駆けつけた。この王宮を出て以来の再開は、悲しむべき出来事として語られている。
ご遺体が安置された王妃の小部屋に入ると、そこは窓から朝日が指し入り、まことに静寂であった。亡き王妃の眠る床、その傍らの壁に掛かる
今この肖像画は、国立歴史博物館に所蔵されている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます