第十五章 背中を押すのは誰?
――――第十五章 背中を押すのは誰?
病室から出た後、恋美は玲良を追いかけた。
「玲良、ちょっといいかな?」
玲良は足を止め、不思議そうな顔で振り返った。
「どうしたの、恋美」
恋美は意を決して言った。
「あのね、お願いがあるの。空くんには、もうあまり近づかないでもらえないかな?」
玲良は目を丸くした。
「え……?どうして?」
「だって……だって、空くんには私という彼女がいるし……それに、玲良も空くんと同じ高校を目指してるんでしょ?なんか……その……」
言葉に詰まる恋美。玲良は少し悲しそうな表情を浮かべた。
「恋美は空くんのことが好きなんだよね?」
「うん」
「だったらさ、空くんの受験のこと、応援してあげられないの?」
「え……」
私は、なんて答えたらいいかわからなかった。そんな中彼女の言葉はつづく。
「本当に大切だったら、私のノートを必要としてる彼の邪魔をなんでするの?」
「だってそれは、」
「あなたが好きなのは空くんじゃなくて、空くんと付き合ってるあなたなんじゃないの?」
恋美はひどくイラつきを覚えた。親友の玲良に、そんなことを言われるなんて思ってもみなかった。
「そんなことない!私は空くんのことが好きなの!」
「私も空くんのことが、好きっていったら?」
恋美は玲良の言葉に息を呑んだ。まさか、玲良も空くんのことを好きだったなんて。頭の中が真っ白になった。
「そ、そんな…!」
「初めて会った時から、空くんの優しさとか、頭の良さとか、全部が好きになったの。もちろん、恋美が彼女だってことは知ってる。それでも……気持ちは抑えられなくて。……そう私が言ったら?」
玲良はそう言って、少し潤んだ瞳で恋美を見つめた。
恋美の中で、嫉妬と焦りが爆発した。このままでは、本当に空くんを玲良に奪われてしまうかもしれない。気づけば、恋美は静かに涙を流していた。
「お願いだから、空くんに関わらないで!彼は私の彼氏なの!」
私は立ち止まり、隣を歩いていた玲良を背中を強く押した。玲良は悲鳴を上げる間もなく、階段を転がり落ちていった。恋美は自分のしたことに一瞬恐怖を感じた。
玲良は下でうずくまり、苦しそうな表情を浮かべていた。私は、その姿を見て、心臓が止まりそうになった。
「だ、大丈夫……?」
と恋美が声をかけても、玲良は返事をしなかった。恋美は恐る恐る近づいていく。
「ごめん……ごめんね、玲良……」
私は、その場から逃げ出した。
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