第3話 玲良・弥来編

第十章 親友との遭遇

――――第十章 親友との遭遇。


 週末、恋美は空くんと街へデートに出かけた。付き合ってから初めての遠出で、恋美は朝からドキドキしていた。空くんは相変わらず優しく、恋美の好きなカフェに連れて行ってくれたり、ウィンドウショッピングを楽しんだりした。

「この服、恋美ちゃんに似合いそうだね」

空くんが指差したワンピースは、淡いピンク色で可愛らしいデザインだった。「そ、そうかな?」と照れながら答える恋美に、空くんはにっこり笑った。

 楽しい時間を過ごしていると、ふと空くんが「あっ」と声を上げた。視線の先には、よく見知った顔があった。安岡 玲良やすおか れいらだ。恋美とは中学校からの親友で、いつも一緒にいるような間柄だった。

「玲良じゃん。こんなところでどうしたの?」

と恋美が声をかけると、玲良は少し驚いた表情でこちらに気づいた。

「恋美!それに、もしかして仁村くん?」

「うん、今日初めて会うんだ」

と恋美が紹介すると、玲良はにこやかに頭を下げた。

「初めまして、安岡玲良です。いつも恋美がお世話になっています」

「こちらこそ、仁村空です。玲良さんも、こんなところで珍しいですね」

と空くんも丁寧に挨拶を返した。

「ええ、ちょっと参考書を探しに」

と玲良が答えると、空くんは目を輝かせた。

「参考書ですか?もしかしてこの時期だと、アルファ模試を受験されるんですか?」

玲良は少し驚いたように目を丸くした。

「え、よくわかりましたね!実はそうなんです。空くんもですか?」

「はい!僕、開星高校が第一志望なんです。あの高校の過去問、結構難しくて……。」

「え、私も開星です!特に数学が難しくて、私も苦労しています。何か対策とか考えていますか?」

すると、空くんと玲良は急に勉強の話で盛り上がり始めた。恋美はその会話に全くついていけなかった。開星高校は恋美たちの地域のトップ神学校だった。空くんが開星高校を目指していることは知っていたけれど、玲良も同じ高校を目指しているとは知らなかった。勉強も得意ではないし、受験のこともまだあまり考えていなかった恋美にとって、二人の会話はまるで外国語のようだった。空くんと玲良は専門的な単語を使いながら、楽しそうに意見を交換している。恋美はただ、二人の会話をぼんやりと聞いていることしかできなかった。まるで自分だけが違う世界にいるみたいだった。空くんは時折、「そうだ、恋美ちゃんも何か聞きたいことある?」と気遣ってくれたけれど、恋美は曖昧に笑うことしかできなかった。親友の玲良と、大好きな空くん。二人の間に、見えない壁があるように感じた。

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