王子のあたしは王子の君と

かーぱた

第1話 王子と姫



人類の男性が絶滅した。



しかし一緒に絶滅するほど女性は弱くない。女性の恋愛対象は女性に変わり、女性同士でも子供が生まれるよう進化した。


性別の概念は消えたが、代わりに王子、姫という身分が作られる。当時の王様が市民一人一人にどちらかの身分を与えた。


王子とは、社会的に男性に近い立場で、主に力仕事を任された。反対に、姫は女性と変わりない立場だった。


しばらくして王子対姫による戦争が起きてしまう。原因は王子からで、体格差もないのに王子ばかり働かされることへの怒りだった。


時代は進み、王子と姫のどちらにもなれる魔女という身分が生まれた。身分は平等にするという条件で戦争は和解で終わる

そして身分は王子、姫、魔女の3つになった。戦後は幼いうちに本人と家族が身分を決めるようになった


今では最低でも18歳までに自分の身分を決める時代になったとさ。


18歳直前の高校生は一体何を思うのだろうか


―――――――――20××年。


あたしたちは桜の並木道を歩いている。地面は花びらでところどころ覆われている。

見上げれば雲一つない青空、柔らかな日差し。絶好調の季節だ


一方あたしの心は


「だりー帰りてえ」

「ダメでしょ。今日は始業式とオリエンテーションだけなんだから頑張りなさい。」

「へいへい」


あたしの隣で真面目な回答をするのは花川ユイカ。

彼女はあたしと幼馴染であり、唯一の親友だ。


「また髪染めたの?」

「かっこいいだろ」


前髪だけ金色にした、ショートのセンターパート。今年こそはモテたい!と気合を入れて染めた。ユイカはあたしを見つめる。が、眉間にしわを寄せ、無言である。


あたしが王子でユイカは姫。一般的には王子と姫がいるだけで恋人同士だと思われがちだが、あたしたちは恋愛関係に発展しない良い仲だと思う


身分で違うことといえば、制服の決まりくらいで、王子はネクタイ、姫はリボン。


下はスラックスかスカートだが、これは身分関係なくどちらでもいい。今日の気分はスカート。

…ほとんどの王子はスラックスだけどな。


並木道を通り過ぎた先にある、私立バラユリ高校。


代り映えしない校門を通る

2年の棟に入り、廊下に張り出されたクラス分けの表を確認する。


どうやら今年もユイカと一緒のクラスだ。

知り合いは何人かいる。クラスの浮いた雰囲気にあくびをしながら教室へ入る


名簿順で机が決まっているらしく、あたしは窓側、前から3番目の席につき荷物を置く。


ユイカの席はあたしの左斜め前。

始業式はさぼろうとした矢先ユイカにつかまれ、体育館まで連行される


校長の話、体育教師による連絡事項。どれも聞く気がないし、飽きる


教室に戻り、先生の話を子守歌代わりに聞いていたら、頭を何かで叩かれた。


「菊池くん、新学期になっても変わらないつもりー?」


顔は笑っているが、裏では怖い担任の中村。ポニーテールで活発な先公だ。いつも堂々としていて、王子のような感じだが、姫だ。去年もあたしたちの担任だった。 


「すんませんー」


そっぽ向いて答える。中村はあきれたようで、教壇に戻り話を続けていた。


教科書や参考書が配られ、長い説明を受ける。やっと終わり、

帰ろうとしたまさにその時。


「ちゅーーーもーーーく!」

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