第14話

「今日の夜ご飯のメニューは何でしょうか。」


ソファに座って本を読む彼の後ろから、ひょっこり顔を出して聞いてみる。

案の定、うわ!?と驚きのリアクションの模範解答例を見せてくれた。

ナイスリアクション。

彼は読みかけの本を閉じ、視線を空中に彷徨わせ逡巡すると


「…ちょっとだけ我儘言っていい?」


ーーーーまた泣きそうな顔で笑った。


「うん、いいよ。」


「茅子ちゃんの手料理食べたい。」


「あたしの?」


「うん。だめ?」


「いいよ。何が食べたい?」


「…………肉じゃが。」


“どうしたの?”

思わずそんな言葉が口をついて出そうになるほど彼の声はいつもとは違って薄弱だった。



………きっと、聞かないほうがいい。


違う。

聞きたくない。なんとなくそう思った。

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