第9話 ゴブリン競争退治

 ゴブリン競争退治。モーアンさんがゴブリンの集団退治から依頼内容を変更した新たなクエスト。


 ルールはシンプル。この森に生息してるゴブリン達をいち早く倒しそれをこの場に持ってくる。


 制限時間は明日の夜明け。それまでに倒し切られなかったら、両者敗北。


 「説明について何か問題は」


 まぁ、1つあるとすれば。

 

 「ありません」

 「こちらも特に」


 ハルモニアが一緒についてきてしまったこと。


 あれから素通りした後、何故か後ろについてきた。

 メルリスの魔法でも止まらず意地でもついてくるらしい。


 観念した俺たちはとりあえず彼女が動きやすい防具を身に付け、一緒にクエストに参加すことになった。

 流石に推しの行動力は度肝う抜かれる。


 取り合えずモーアンさんに問題ないと頷き。


 2人も頷いき、モーアンさんは話しを続け、


 「では、ゴブリン競争退治……はじめ」


 合図とともにマッドバンガ―の2人は森を駆け巡った。


 俺たちもうかうかしておれない。直ぐに走り出した。


 ♦


 「はい、39匹目!」

 「ぐががががぁ!」


 開始から2時間が経ち、俺は39匹目のゴブリンを透明化で気づかれず短剣で切り裂いた。


 ハルモニアとメルリスが近づき一度合流する。


 「そっちはどうだい」

 「えぇ、思いのほかラランダさんがいてくれたおかげで体力の負担も軽くなった」

 

 よかった。また2人をあのままにしたら大変になるかと思いきや。

 上手くやってるみたいでひとあんし――


 「ありがとう。でもアルスさまと2人っきりにはさせませんから」

 「随分と大きく出たわね。でも基本的に私と彼だけでなんとかなるから」


 じゃなかった。流石にこのバチバチを止めるなんて……

 透明化で気づかれないようにそぉ~っと。


 「どこに行くのかしら?」

 「そうですよアルスさま。せめて私と一緒に」


 透明化する寸前、メルリスの拘束魔法で縛られ逃げ道を失った。

 ってか、目から光がなくなって怖さが更にますが!


 一体俺がいなくなった間なにがあった!


 「って、そんなことより。メルリス、こいつも」


 そういいながら、メルリスは杖で俺が倒したゴブリンを冷凍し圧縮した。

 この方が便利だし軽い。


 「……いい加減この拘束を解いてくれ。逃げねぇから」


 拘束が解除され、圧縮したゴブリンをメルリスが用意してくれた袋に入れた。


 「メルリス達のと合わせてえ80体か」


 今更だがメルリスはやっぱすごい。推しの力もあってのことだが本当に、


 「いきなりそんなジロジロみられても……バカ」


 おっと、すごすぎるあまり幼馴染をジロジロ見てしまった。ん?でも最後聞き取れなかったが?


 「「あぁああああああ!!」」


 ッ!今の叫び声、……近くからだ!


 「アルスさま今の声は」

 「あぁ、だが急がないと!」


 俺たちは叫び声のする方に走って行った。


 (頼む、間に合ってくれ……!)


 ♦


 叫び声がする方に向かって着いてみれば。


 「ひぃいいい!こっちくるなっ!」

 「た、助けてぇええ!」


 大当たり叫び声の主はマッドバンガ―達だった。


 彼らが襲われてるのは。顔はゴブリンでも自身より3メートル大きく、身体全体紅く。しかも剛腕が6本生えてるこのモンスターの名前は”アシュラゴブリン”。


 アシュラゴブリンはSランクの魔物。本来はステラ大陸とは違うところに生息してたはず。


 「どうしてアシュラゴブリンがこんなところに?」


 草陰で隠れながらメルリスが疑問感に思う。


 「もしかして、最近のゴブリン被害となにか関係が……」


 ハルモニアもなにか気づいたか。


 「恐らく奴がここに現れた途端、他のゴブリン達を牛耳ってるに違いない」


 2人は目を丸くし驚いた。まぁ、傍から見たらあいつらも同じように村を独占しようとしてたんだ。

 因果応報ってやつ。


 「ぐぁああああ!」

 「兄貴ぃ!」


 ここであいつらが消えれば村に平和が……それでいいのか?


 「うがぁあああああ!」

 「ひぃいいいい……!えっ……」


 アシュラゴブリンが拳を振り上げ地面に突く前に間一髪、透明化で2人を救った。


 「大丈夫か?」

 「え……なんで?」

 「なんでって言われても」


 頭をボリボリかきながら困った。


 「がぁああああっ!」


 おっと、対象が俺に変わったか。だかメルリスの6つの拘束魔法でなんとか抑えてる。


 そこに駆け寄ってきたハルモニアに、


 「ハルモニア。彼らに治癒魔法を!」


 彼女は頷き、治癒で2人を治す。


 「なんで……あんだけ散々なことした俺たちを助ける!?」

 「別に理由なんてない……ただ」


 背を向け腰の短剣を引き抜き、


 「あいつの方が気にいらねぇ。それだけのことさ」


 

 

 


 


 


 

 


 


 

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