第5話 どれにする

 王城でのハプニングな連続が終え、俺たちは一旦止まってる宿に戻った。だけど、


 「ここがアルスさまの部屋なんですね」

 「いや、ただの宿泊部屋です」


 推しが俺の部屋にいる。

 

 元々、王宮で泊まる提案してくれたが流石に自分達だけ特別扱いさても困ると陛下に断った。


 だけど、ハルモニアたんは俺たちのところに泊まりたいと。

 トップアイドルとはいえ流石にお姫様を安宿に連れて行くもの断ったが何故か  


 「大丈夫です。それにもっとアルスさまのことを知りたいから」


 スポンサーとはいえ推しにそこまで褒められ、あっさり了承した。のだが。


 「あの、俺のところよりメルリスの部屋に行った方がいいかと」

 「どうして?それに敬語はいりません。できれば”たん”は無しで下の名前を」


 軽く頷きフランクに接する。確かにこっちの方がしっくりくる。でもそれより。


 「王女とはいえトップアイドルと一緒にいたら色々不味いんじゃあ」


 主に俺が。


 「確かにそうですけど、アルスさまならなにされても」


 手を下にもじもじしながら後半小さくブツブツとなに言ってるか聞こえなかった。


 「なにしてるのかしら」


 そこにノックのせず勝手に入ってきた幼馴染。


 「ラランダさん。着いてくるのは構いませんが流石に彼から離れてもらえるかしら」

 「お気になさらず。私はアルスさまともう少しいたいから」


 推しにいきなり腕を組まれた。なにこのご褒美。


 「なっ!アルスもいい加減、彼女から離れて」


 えっ、メルリスまで腕を組まれた!?どういう状況だこれ!?


 「アルスさまはもう少し推しといたいですよね」

 「なに言ってる一番付き合いの長い幼馴染な私でしょ」

 「え……」


 どうなってる?推しと幼馴染が俺に迫ってくる!


 「幼馴染は確かに羨ましい関係ですけど恋愛には居たらないと本に書いてあった」

 「それを言うならアイドルも時がくれば別の推しに乗り替えされるが」


 ねぇ、俺を間にバチバチするの止めて欲しいが。普通に怖い。


 「あ、あの。そろそろ明日のことでも話さないか。ほらメルリスも来たことだし」


 なんとかこの地獄を脱するため明日の話題を無理やりねじ込んだ。


 俺の提案を聞いてくれたか2人は仕方ないと残念そうな顔で離した。

 なんでそんなに落ち込むの?


 「確かに。私も明日の計画についてアルスと話したかったし」

 「それなら私も。どのようなことをするのか気になります」


 そうだな。実際俺がやめた後は行き当たりばったりな考えだったからここは、 


 「公認クランとはいえ、俺たちはまだAランクに上がったばかり」

 「確かに。やはりAランククエストは様子見ってことかしら」


 メルリスの意見も至極もっとも。いきなりAランクモンスターと戦闘するのも……でも。


 「一度冒険者ギルドに行こう」


 ♦


 「うわぁ!ここが冒険者ギルドですね」


 初めて冒険者ギルドに来たハルモニアは目が宝石みたいにワクワクしてた。


 当然バレないように黒のウイッグと帽子、それから眼鏡しているから絶対バレない。


 「おい見ろよ。クソ盗賊が女を攫ってきたぜ」

 「しかも王国公認になるとかどんな弱みを掴んだのか」

 「しかも星のコスモ旅路スターのリーダーも辛いなぁ。あんな疫病神職と一緒で気の毒だ」


 近くの席から冒険者達が俺の顔見るなり悪口を平然と言う。

 やはり、あんまりいい空気しないなここは。


 「アルスさまこれはどういうことですの?」


 推しが小声で話しかけられ今の状況が気になるようだ。

 まっ俺の状況を知らないのも無理はない。


 俺も小声でハルモニアに話しかけ、


 「俺の職業が『盗賊』だからみんな俺のことを疎ましい目で見てやがるのさ」

 「そんな。それだけのことで……」


 深く俯き落ち込んでしまうハルモニア。


 「気に病むことはないから。寧ろもう慣れっこだ」


 それでもハルモニアは落ち込みメルリスも顔は正面で見えないがすんげぇ嫌な顔をしているだろう。


 けど、そんなことを気にしてたらキリがねぇ。何事も切り替えが大事。


 「すみません。Aランククエストの掲示板をみたいのですが」

 「はい、2階への通行を許可いたします」


 受付嬢も若干苦笑いだったが気にせず階段を登った。


 「これが依頼の掲示板」


 俺よりもデカい板にそこから端から端までぎっしり張り巡らせてる紙の量。

 ハルモニアは興味津々に見ていた。

 

 「アルスさま、ここと1階にあるのとなにが違うんです?」

 「いい質問だ。ここのギルドはちょっと変わってて、フロアごとに受けられるクエストがランクによって決められるの」

 「そうなんだ」


 この階段システムを作ったギルドは他の冒険者達のモチベーションと依頼人の信頼性を考えて作ったと。


 「1階はEからBまでのランクだが全面的に受けられる。今俺たちがいる2階はAランク全般。そして最上階は」


 気になりすぎて唾を飲み込むハルモニア。


 「SランクはSランク又はSSランクのクエストが受けられる!」


 おおうとキラキラした瞳で興奮した。


 「いいな。なんかドキドキワクワクして私も」

 「そうだろう」

 「それに」

 

 推しが俺の顔を真っ直ぐ見、笑顔で、


 「アルスさまがすごくキラキラしてるから!」


 えっ


 「……流石に照れるって」


 あえて作り笑いで誤魔化してるがなんとか。


 「アルスもういいかしら」

 「おっと忘れるところだった」


 メルリスに呼ばれ依頼を見渡した。今日ここに来た目的は。


 「何か初級でいけそうなのは?」

 「んん、どれも微妙」


 まぁ、Aランクとはいえ殆ど4人掛かりの難易度だし。

 こんなこと思うのもアレだけど、一度でいいから受けてみたかった。

 

 いけそうなのは……


 「アルスさま、これはどうでしょう」


 ハルモニアが指さした依頼を見る。


 「”ゴブリンの集団退治”のクエストか」

 「貴女にしては中々のセンスね」

 「……ありがとう」


 なんか2人とも昨日からこんな感じだ。一体なにが原因だろう?


 「……悪くない。これなら俺たちでも」

 「えぇ、決まりね。早速武器の手入れと馬車の手配を」

 「それなら、こちらで」

 

 クエストが決まり、明日は俺たち星のコスモ旅路スター初のAランククエストだ。なぜだが明日が楽しみになってきた。


 


 

 

 


 


 

 

 


 

 


 

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